先日の雨で一気に冷え込んだ街を男は一人歩いている。安物の上着をいくつも重ね着しているせいで着ぶくれしていて、下半身の細さと不釣り合いで少し滑稽に見える。
前から風が吹きつけ男の顔を冷やす。男の鼻と耳は、蒼白な顔面とは対照的に赤くなり、もう触っても何も感じなくなってしまった。
男がこんなに早くから街を歩いているのは、普段にぎわっている目抜き通りが閑散としているのを心置きなく歩くのが好きだから、というわけではない。確かにこの男は人酔いするため、夜中や早朝に街をほっつき歩くことがあるが、今日はそれではない。
午前四時五十分に現場に到着し前任と交代する。日の出も遅く、あと二時間以上しないと日光も拝めないこの煌々と照る人口灯のたもとで男は黙々と作業をする。冬の現場は非常にきつい。夏は暑くて意識が朦朧とすることがあるが、冬の体の芯まで吹き抜けるような風が男はどうも駄目であった。しかし日銭のためしないわけにはいかないのである。
特に意欲的ではなく、そうといってそれほど無能ではない、中肉中背で特徴もない、この男はほどほどに器用で、ただ流されるように今まで生きてきた。
「凛々爛々」と「事実は存在しない。在るのは解釈だけだ」に対して色々考えたこと
1.はじめに
1.1. きっかけ
「事実は存在しない、在るのは解釈だけだ」(以下、簡略化のために「ノー事実バット解釈」と呼ぶ)はニーチェが著書「権力への意思」で述べた言葉である。原文ではこうだ。
Nein, gerade Tatsachen gibt es nicht, nur Interpretationen.
私はこの言葉をこれまでにも本ブログで何度か紹介してきた赤い公園の「凛々爛々」という配信シングルのジャケット写真で知った。ザリガニ缶の下の方にこの言葉がプリントされている。
この格言がジャケットに採用されたのは、デザイナーかメンバーが、この格言が曲で歌われている思想にマッチすると考えたからだろう。凛々爛々は、周りのがあなたのことを悪く言ったとしても、それはその人があなたの素敵な面を引き出せてないってだけなんだよ、そんな人のせいで惨めな気分にならないで、自分だけは自分を愛してあげようね、というメッセージが込められた楽曲である。
続きを読む放課後ティータイムのギタリストとしての唯ちゃんをたどる その1
はじめに
今日は私の敬愛する唯ちゃんの誕生日である。唯ちゃんを知ってから初めて迎える誕生日なのでうれしい。おめでとう。
唯ちゃんとは言わずと知れた、「けいおん!」に登場するバンド放課後ティータイム(以下HTT)のリードギターとボーカルを務める平沢唯のことである。彼女は高校に入学した後、カスタネットみたいな軽い音楽をやるんだと勘違いして軽音部に入部した。そこで初めてギターを触ったにも関わらず、その絶対音感による圧倒的チューニング力、一回聴いただけでどこを弾けばいいかわかってしまう耳コピ能力、それを再現できてしまうピッキングスキルといった天性の才能によって、1年生の文化祭でもうオリジナル曲を1曲弾ききってしまう。
続きを読む映画「アイの歌声を聴かせて」感想対談・後編
映画「アイの歌声を聴かせて」感想対談・前編
はじめに
映画「アイの歌声を聴かせて」が良作だったので感想記事を書こうと思う、と読み鍋屋のグループラインで表明したら、メンバーの一人であるTOも観たと返事をくれたので、TOと感想をzoomで話して書くことにしました。結局80分も話してしまい(笑)、40分間分書き起こすまでに9000文字を超えたので、前後編に分けてノーカットでお届けします。今回は前編。観た前提でお話しているので、未見ネタバレ慎重派の方は目次だけ見て回れ右した方が良いかもしれません。目次の手前までは大丈夫です。とりあえずおすすめの映画だったことはお伝えしておきます。
発言を極力一言一句書き起こして、句読点や感嘆詞など、少々読みづらい箇所もあえて残しています。話題の変わり方とかとりとめのない感じに仕上がっていますが、話している様子が伝わると幸いです。映画も楽しかったけど、この対談も楽しかったー。(p.w.θ)
続きを読む公認会計士試験に受かりたい
合格発表を直前に控えて、僕はこのタイトルについて書くことを決心した。
平常は話す方が書く方の3千倍は得意、こと論説文においては周りが構成力53万を誇る中僕は126などもう何も書かない方がいいのではないかと疑われる才のなさではあるけれども、僕が実に3年5ヶ月の間疑問に思い続けてきたことについて、今書き留めておかねば様々の記憶が散逸しもう二度と思い出せないようになること必至、未来ある若人により多くの情報を提供しよりよい進路を選んでもらわんとする僕のささやかな老婆心である。
完全に素人の自称分析なので、何でも許せる方のみご覧ください。
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