読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

好きな曲をギターのコード弾きで楽しむための備忘録 後編:曲のコードを知るのに重宝するツール

はじめに

前編で主要なコードの押さえ方を整理した。さあじゃあこの押さえ方を使って好きな曲のギターのコードを再現してみよう。そんな時、音源を聴いて耳コピしたり、ミュージックビデオなどの演奏シーンを見てどう弾いているか理解するのがベストなのは確かだが、私のような初心者にはその技術がなく労力がとても大きい。そこでコピーを試みた先人たちの記録を借りて、なるべく精度高く、本物に近い演奏にたどりつこうというのが本稿の理念であり、そのために有用なツールを紹介する。弾いてみた演奏と聴き比べて違うなとなったらそこを改訂していくのが良いと思う。

前編はこちら

yominabe.hateblo.jp

本稿の目標

なるべく多くの曲をコード弾きで楽しめるようにする

TAB譜編

前編で述べたとおり、ギターの弦の押さえ方を表した楽譜をTAB譜と呼ぶ。コードだけでなく単音弾きのフレーズも、TAB譜を見て弾き方を真似すればその音程が出る。本人が書き起こしたものから、プロの採譜者が書き起こしたものや、アマチュアの人が趣味でYouTubeにあげているものまで様々だ。あの曲のギターリフを練習したい、とか、コードのとおりには弾いてみたけどどうもその曲っぽくない*1という場合にはTAB譜が必要になってくる。バンドなら全パートが収録されたバンドスコアが、フォークソングなど主にアコギで弾くことが想定される曲はギター譜にアクセスしやすい。まあそもそもTAB譜が入手できる曲なら入手してみるのが吉。

とはいえギターは同じ音の出し方が色々あるので、押さえているフレットは違うかもしれない。正確度は、私の印象では以下の4階級に分けることができる。

(A) 本人が演奏した通りの押さえ方

(B) 押さえ方は違うけど音は一緒、あるいはコードを鳴らす時に押さえている弦の本数が違うけど、聴こえ方に大きな影響はない

(C) ちょこちょこ鳴っている音が違って気になる

(D) そもそも合わせるつもりあるんかこれ?

(A)~(B)は本人の監修によるバンドスコアと演奏場面が盛り込まれたミュージックビデオ・ライブビデオ、(B)~(D)で平均点は高めなのは監修なしだが有料のスコア、(B)~(D)で平均点が低めなのは無料のスコアや弾いてみた動画*2、といった感じだ。ミュージックビデオやライブビデオを再生して、時々停めたりスロー再生したりして指の位置を血眼になりながら確認するのは、めちゃめちゃ好きなバンドだと楽しいが、それでもやはり押さえているところが音を出すために押さえているのかミュートするために押さえているのか分からなくて諦めることも多々ある。目の前に回答が用意されているとは言えども、(A)の域に達するのは至難の業で、大体はどのへんのフレットを押さえているか、高音弦と低音弦のどちらかくらいが分かる程度なので、やはり前編の内容をヒントにするのがいい。

公式バンドスコア

バンドが公式で出しているバンドスコア本。ベスト盤やフルアルバムの全曲が曲順に収録されていることが多い。だいたい収録CDの円盤と同じくらいの値段かと思う。監修入りでないものについては、ジャケ写とかアー写が使われているスコアは許諾をとっているはずなのでそれなりに信用できる、と思っている。でも椎名林檎がインタビューで、ギターの叫びを採譜やさんに×(音程不明)で書かれてしまっていた、みたいなことを言っているのを読んだことがあるから、やっぱり演奏者の100%は表現されていないかも。そもそも浮雲みたいにライブで毎回違うフレーズを弾いている人もいるから、譜面に起こされているのはアルバムバージョンなど特定のアクトであることにも留意。

www.asahi.com

椎名林檎が言及していたのはこの記事だった。読み返してみたら、そもそもどこを押さえているかといった耳コピの仕方はナンセンス、という感じの話だったから、この記事の主題とはずれてくる。でも確かにギターって、音色が違うと同じ音程でも全く違って聞こえるし、その違いは他の楽器よりも遥かに大きいので、林檎先生の言うこともおっしゃるストリートである。そう考えると、私の「押さえているフレットもなるべく一緒にしたい」(けど技術力が伴わないので結局挫折する)という理念は、ある意味推しがどんな弾き方をしているか少しでも多く知りたい、という欲求の現れなのである。まあ今のところ私がそこまで考えるバンドは赤い公園くらいだな。

ギター・マガジン

盲点だったが、私が初めて手に入れたギター・マガジン2021年7月号、東京事変の特集号には、何曲かのギター譜が載っていた。バンドスコアではないが、ギターパートについては一曲まるごと載っていて、めちゃめちゃありがたい(手数が多すぎて高難度なので、今は到底手が出せないが)。最新アルバムに関しては、使ってるエフェクターの写真まで載ってたから超貴重。この号しかほとんど読んだことがないので、他の号の事情はわからないが、ギタマガは他のギタリスト特集でもたまにスコアを載せてくれるのかもしれない。推しバンド(ギタリスト)の特集号はヨウチェケラー。

1曲売りバンドスコア

ヤマハなどのサイトや、楽器店で1曲5~600円で売っている。公式スコアやギター・マガジンよりも圧倒的に多くの曲にアクセスできる。私の認識としては耳コピのプロが一定の精度で書き起こしてくれたスコア、といったところ。でもそのバンドやギタリストを好きな人が採譜しているわけじゃないから、ギタリストの手癖(この辺のフレットを押さえるのが好き、とか、このコードはこういうふうに抑えるってインタビューで言ってたよ、とか)が再現されていることは期待できない。

コード編

とりあえずコードを弾けば曲を楽しめるというのが、ベースやドラムなどのリズム隊にはないギターの魅力である。有料で提供されているコードに関する情報は、基本的にバンドスコアやTAB譜とセットになっているので、前節を参照されたい。本節で紹介するのは、無料で得られるコード情報である。

コード投稿サイト

「(曲名) コード」でググるとほとんどの曲で真っ先にヒットするのがこのサイト。私はufretによくお世話になっている。結構な数の曲は、このサイトに掲載されたとおりに弾けばその曲を弾いてるっぽくなる。押さえ方は曲によって表示が変わるわけでもなく、前後のコードからの変化は考慮されていないので、表示される押さえ方通りに押さえると、コードチェンジに余計な労力を割くことになるかもしれない。どういう移動だとコード移動が楽なのか、このページで複数並べた押さえ方を選択肢にして貰えれば幸いである。

コード解析アプリ

ufretに載っていない曲は他のサイトでヒットすることもあるけど、なんか変に複雑なコードが出てくることもある。そういう時にコード解析アプリが有用である。私が重宝しているのは、YAMAHAがリリースした無料のコード採譜アプリ「Chord Tracker」。他のアプリを紹介してもらったりググったりしてみたが、アカウント発行が不要で無料なこのアプリが一番手軽であった。ただしWAV/MP3/AAC形式(サンプリングレート44.1kHz、ステレオ/モノ)のオーディオデータしか使用できないそうなので注意。あとたまにテンポがちゃんと読み取れてないときがある。それと一定以上複雑なコードはほとんど出てこない気がする。まあ知名度が低いとかバンド向きでない曲をギターで弾いてみたいのだ、という場面で登場させると幸せである。

本稿で紹介した本、サイト

guitarmagazine.jp

www.ufret.jp

jp.yamaha.com

 

22/2/22提出 22/3/10公開

*1:そういうときにはギタリストは、コード全体やルート音はベースに任せていたり、あるいは小節頭でのみコードを弾いてあとは自由に弾いていたりすることが多い。ギターが2人いるバンドの場合は、基本的にサブギターがコードを弾いてリードギターがリフを弾くので、コードだけだと物足りなさを感じるかもしれない。

*2:そもそも弾いてみた動画は完コピを目的としていないものも多い。