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杓子を逃げしものや何

2022年1-2月に出会った曲たち その3:never young beach編

様々なアーティストの曲を初めて聴いていっぺんにヘビロテする時期が訪れた今年の冒頭2ヶ月。そこで出会った曲たちをひとつの記事で書ききろうと思ったが、アーティストやタイアップ作品ごとにそれなりの分量になったので、それぞれ一つの記事にして好きな曲をレビューしていく。これまでOfficial髭男dism、羊文学の好きになった楽曲を紹介してきたが、3回目となる今回は、never young beach!

never young beachとの出会い

2014年に宅録ユニットとして結成された4人組バンドで、2015年にインディーズデビュー、2017年にメジャーデビューをした。私が初めて出会ったのは昨年7月に観たアニメ映画「サイダーのように言葉が湧き上がる」である。本作は私が昨年映画館で観た新作映画の中で3番目に好きだった。詳細は以下の記事で言及した。

yominabe.hateblo.jp

その後飲み友達がネバヤンに言及する機会もあり、モチベーションが上がれば本格的に聴き始めたいバンド上位だったネバヤンのアルバムをとりあえず1枚聴いてみようと思い、それまでに聴いたことのあった曲の含まれる2nd album「fam fam」をレンタルした。また「サイダーのように言葉が湧き上がる」もデジタル購入した。本稿ではそれらの中で気に入った5曲を紹介する。

楽曲レビュー

サイダーのように言葉が湧き上がる

私が初めて出会った曲。イントロがめちゃめちゃ短いけどそのギターフレーズで心を掴まれる。本稿で紹介する他の曲は2016年リリースのアルバム収録曲なのに対して、この曲は昨年リリースなのが関係しているかもしれない。2016年は音楽配信売上の媒体第1位がダウンロードからストリーミングに移行する時期と重なっている*1。サブスク配信でのストリーミング聴取では、多くのユーザーが曲の序盤で気に入るかどうか判断し、気に入らなければスキップするため、イントロがどんどんと短くなっているのだという*2。おそらくこの曲もその流れを受けているのだが、その短いイントロにネバヤンの小気味よいギターリフの魅力が詰まっているのが良い。そして全体的にエフェクトがかかっていない編曲は、主題歌となった映画のモチーフとなっている高校生、夏、サイダーといったすっきりさっぱりした雰囲気を演出している。

Motel

ネバヤン最大の特徴だと私が思っている、乾いてさっぱりしたギターが大活躍している。歌声がこのギターの音色にマッチしていい声だなあ。踊りだしたくなる軽快なビートも魅力的。この声で「妙にかわいいね」っていう歌詞を口ずさんでいるのが妙にかっこいい。このギターと歌声の組み合わせが、ネバヤンは夏の海辺に似合うなあと思わせる所以である。ボーカルは高橋一生の弟だそうで、まさにこの兄にしてこの弟あり、みたいな感じだ。

fam fam

アルバム表題曲。声にリバーブがかかっていて奥行きがあるのが良い。ベースの「テッテッテー テッテッテテー」が印象的なイントロ、その後他の楽器にも広がっていくこのリズムが小気味よくて心地良い。高低の推移は激しくないけど何か耳に残るメロディライン。

明るい未来

先述した飲み友達に紹介してもらい、初めてYouTubeで聴いた曲。サブギターの人が使っているギターがけいおん!の唯ちゃんと同じ!!と一人盛り上がっていたが、どうやらビンテージものらしい。

これまでのネバヤンの音像と言えば、ヴィンテージのレスポールリッケンバッカーが奏でる、西海岸をクラシックカーで転がすようなイナタさが特徴的だった。このツアーファイナルは若干変わり、上手からジャガーストラトテレキャスターフェンダー系のシングルコイルで揃えたトリプルギター。音像は硬いサスペンションをきしませるスポーツカーように、よりソリッドになっていた。

(筒井つの「『1991年世代』の輝きが、燦燦と初夏を照らす never young beachツアーファイナルに、胸を打たれた」2018年5月2日、音楽文ウェブサイト)

音楽文のウェブサイトが3月末で閲覧できなくなるので一部だけ引用した。いやこの人の音色の表現良いな。見習いたい。
曲の内容としては付き合っているカップルを歌った歌だが、それがネットリした感じじゃなくさっぱりしているから聴いてて心地いいんだと思う。あんまり意識してなかったけどここまで3曲連続ラブソングだし、歌詞で歌われる甘い感情を目立たせないサウンドの味付けが良い。

お別れの歌

アルバムの中で「明るい未来」の次に並ぶ最終曲。前の曲からの展開の躁鬱がすごい(笑)無様さをさらけ出して叫ぶように歌っていて、前曲までのさっぱり感はどこへやら、ウルフルズの「やぶれかぶれ」を連想させる。そう思えるのはこの曲がアルバム最終曲で、それまですました顔で歌っていたボーカルがそれをすべて捨ててしまっているという背景も込みであると思う。

 

22/2/24提出 22/3/17公開

*1:以下の記事を参考にした。

www.riaj.or.jp

*2:たとえば以下の記事。

www.tbsradio.jp