ライブ遠征旅行2日目。実家に泊まって明けた日に、 広い首都圏の中から私が選んだのは立川だった。東京都の西の方に位置する立川市は、人によって様々なイメージを持つ街だろう。23区以外の東京の市を列挙してください、と街行く人に尋ねたら、5番目くらいには来る気がする*1。シン・ゴジラでも23区が壊滅状態に陥った際の政府の臨時活動拠点として登場した。
私にとってはこの街は2つの特別な場所を抱える街である。そんな2つの場所と、もう1つ新たに出会った素敵な場所を紹介しながら旅行記を綴る。
1日目の記録はこちら
素敵な映画館がある街、立川市
私が人生で初めて立川に注目したのは、映画館だった。 その名も立川シネマシティ。私がその名を知ったのは、「マッドマックス 怒りのデス・ロード」のアカデミー賞受賞記念に6000万円のアレイスピーカーを購入して”極上爆音上映”を行う、というニュースであった。
キャパ数百のスクリーンに、アリーナライブで使われるようなスピーカーを採算度外視で置いちゃうその狂いっぷりに惹かれた私は、その年の夏に「シン・ ゴジラ」を鑑賞しに行き、 蒲田くんがアパートをぶっ倒すシーンで、箱全体が揺れるほどの音圧に見舞われた感動で、思わず涙を流してしまった。
シネマシティでは貸切プランもあるそうだ。 仲間でスクリーンを貸し切って上映会するの、楽しそう!
フードメニューも充実していた。私は揚げたての唐揚げとポテトを楽しんだ。
そんなシネマシティで今回は「犬王」を観た。 南北朝時代の琵琶法師と能楽師の話、というと魅力が伝わりにくいかもしれないけれど、どうやらTwitterでの評判を見るに「時代劇フェス」と言われるくらい劇中の楽曲演奏シーンが魅力的らしい。音楽がフィーチャーされる映画ならシネマシティにぴったりではないか、と思い、東京に滞在するこの機会に観に行くことにした。
やはり音響は目を見張る物があった。まず制作会社ロゴの「ANIPLEX」の声からして聴こえ方が違うのだ。 住んだことのある京都の、 今でも面影が残る鴨川べりや清水の舞台がライブ会場と化してロックライブさながらの能舞台が繰り広げられる様は、その音響の良さも相まって臨場感たっぷりで、私も劇中の観客とともに手拍子したくなったほどだ。良質なエンタテインメントを見せてもらった。
座席の間にある小さなランプがかわいい。
素敵なベンチがある街、立川市
映画館を出て次に私が向かったのは赤いベンチ。これは「赤い公園」という、 立川市出身のメンバーによって結成されたバンドがメジャーデビューした記念に、旧立川市役所、現子ども未来センターの前の広場に設置されたベンチだ。
周りの自然や街の中の色合いとは一線を画した真っ赤なベンチは、広場にたどり着くや否や視界に飛び込んでくる。いつでもここを訪れると変わらず鎮座している安心感をもたらしてくれる。ほとんどの楽曲の作詞作曲を担っていた津野さんが、この街でその楽曲の元になった感性を育んだんだな、そしてその街にいま自分はたたずんでいるんだな、としみじみと感じられて、穏やかな時間が流れる。
このベンチだけでなく、街の至る所に採用された立川市公式マスコットキャラクター「くるりん」のモチーフもそんな穏やかな気分にさせてくれる。
というのも、赤い公園はくるりんの絵描き歌を立川市に提供したことがあるのだ。この曲は一般的な絵描き歌のようにシンプルなメロディながら、その伴奏はどのパートも遊び心満載だ。
そうこうして立川の街をブラブラしていると、赤い公園に思いを馳せることができて、赤い公園の曲をまた聴きたくなる。そして聴き始めると津野さんの機嫌の良いギターが耳を刺激してくれる。ああやっぱり私は赤い公園が好きなんだなあと実感する。
これは前日に会った後輩が、赤い公園で唯一知ってると挙げてくれた曲。もっと有名な曲が色々ある中で「今更」だけ知ってるなんてことある??(笑)と思ったけど、本人は原っぱでメンバーが踊るMVと述べてたのでたぶん間違いではないと思う。そうして言及してくれたことが嬉しかったので、今月は赤い公園の楽曲のなかで、再生回数の1,2を争っている。ちょうどこのパートを書いてるときにも流れ始めた。
そうこうして今月は、これまで新譜を聴き始めたときや、ライブを観に行った後よりもハイペースに、赤い公園を聴いている。好きになってから2年少しで解散してしまったバンドを、特に供給があるわけでなくまた好きになれて嬉しい。そして旅行があったことで生活の一部が影響を受けるのは素敵だと思う。旅行が楽しいほど、帰ってくると夢だったんじゃないかという気分になるけれど、そうして生活に残った爪痕が、夢じゃなかったのだと教えてくれるから。
素敵なまんがぱーくがある街、立川市
この日は前の日に続けてとても暑い日だった。赤いベンチの向かい側の子ども未来センターで涼もう、と入ってみると、その前には時間の都合で訪れられなかったまんがぱーくが開館していた。ちょうど空港に向かうまで時間もあることだし、しばし涼んでいこう、と入ってみた。
まんがぱーくから赤いベンチを見下ろしたところ。
まんがぱーくは言うなれば公営のまんが喫茶みたいなものなのだが、その空間はネットカフェより明るくて楽しく作られている。利用者がたくさんいて写真を撮るのは控えたので、館内の様子は以下の記事でご覧いただきたい。
こちらは館長インタビュー。
私はアニメを観てはまった「その着せ替え人形は恋をする」と「ゴールデンカムイ」を読んだ。空間が素敵なだけじゃなく、利用料が400円と格安なのも嬉しい。ふつうのネカフェなら3時間オープンスペースを利用しても600円くらいかかってしまうし、フルフラットの個室スペースならその倍くらいになるが、まんがぱーくなら入ってから閉館時間まで居ても400円で済んでしまう。こういう料金体系なら、時間に追われて漫画をざっと読むことなくじっくり読むことも出来る。しかも明るい空間だから子どもから大人まで幅広い年齢層が安心して楽しんでいた。通いた過ぎる。
職員さんに声をかければくるりん柄のマンホールカードも貰えちゃうぞ!!さっきの写真柄のカードも他の場所でもらえるらしいぞ!!
そして帰路へ
こんな感じで立川には、万人受けする名所ではないかもしれないが、素敵なスポットがたくさん散らばっていて、私はそれを満喫することができた。山手線以西に職場ができたら住みたい街ランキング、不動のナンバーワン。ついでに所沢にも近いことが判明したので、ロッテ戦のビジターゲームも見に行けちゃう!ぜひ皆さんも一度訪れてみてほしい。
立川駅から空港への直通バス出てるじゃん♪と、深く考えずに離陸33分前に到着予定の空港バスに乗ったら道中が混雑していて5分遅れた。チェックインを20分前に済ませないと乗れないところだったので、たった5分の遅れでもめちゃめちゃヒヤヒヤした。やっぱり飛行機には余裕を持って乗ることにしよう。