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「デジモンアドベンチャー」は夏に観るのが一番良い

はじめに

はてなブログの特別お題が「夏に見たい映画・ドラマ・アニメ・バラエティ」というので、アニメやドラマを愛でる記事を沢山生産している本ブログとしては是非とも参加したい、と思い、筆を執った。

毎年夏になると思い出す作品がいくつかある。その中でも私にとって大事な作品がテレビアニメ「デジモンアドベンチャー」だ。舞台は1999年8月1日の東京。キャンプに訪れた主人公の子どもたち7人が突如現れた時空の狭間に吸い込まれ、気付くと傍らには自分の名前を呼ぶ未知の生命体「デジモン」がいた。全く覚えのない場所に突如降り立った子どもたちは、元の生活に戻るために冒険を始める。やがて自らが「選ばれし子どもたち」であることを知らされた子どもたちは、その使命を果たすために冒険の歩みを進める――。

デジモンアドベンチャーの魅力

デジモンアドベンチャー一話完結長編ストーリーの両方をいいとこ取りした作品である。

まず一話完結ものとしての良さを述べる。本作における一話完結は基本的に、冒険に立ちはだかる敵デジモンを、パートナーデジモンが倒して歩みを進めるというものだ。この「毎回進化してくれる」というのがまず本作の見どころの一つ。

ご存じの方も多いかもしれないが、デジモンは何段階かに”進化”する。7人の子どもたちには各々に1匹ずつパートナーデジモンがいて、そのうちの誰かが毎回必ず進化して戦い、戦いが終わるとまた元に戻る。このニチアサの様式美・進化バンクがめちゃめちゃかっこいいのだ!!何度見ても飽きないし、進化のグレードが上がるごとにかっこよさが増していく!!そして極めつけは進化の時に流れる挿入歌、宮﨑歩が歌う「brave heart」である!アーミングの効いたギターの音色で始まるイントロを聴くと、視聴者と進化するパートナーデジモンのボルテージがシンクロして、観る者も子どもたちと一体化してデジモンを応援することが出来る。イントロが終わる頃には進化が終わって大きくなっているデジモンたち、何度観てもカッコイイ!!

次に長編ストーリーとしての良さだ。本作は簡単に言うとボス戦を繰り返して主人公たちが強くなっていき、目標を達成していく物語だ。ボスがどんどん強くなっていくにつれて、先述した進化のグレードが上がっていくのが観ていて楽しい。ボスたちは邪悪の象徴の見本市みたいでキマったビジュアルだし、それに対抗するために進化していくパートナーデジモンたちもかっこいい。

また、全編を通した謎の多さも本作の魅力の一つだ。序盤だけでも、飛ばされてしまったここはどこ?デジモンって何?どんな時に進化するの?なんでこのパートナーデジモンたちは自分たちの名前を元から知ってたの?どうしてこの主人公たちが選ばれたの?…謎が解決されたと思ったらまた新たな謎が増える様も興味をそそられる。

しかしそれだけなら他の作品と大差ないかもしれない。本作の長編ストーリーとしての最大の特徴は、主人公たちの精神的な成長である。勇気、友情、愛情など、7人の子どもたちにはそれぞれ特性が備わっているといい、各キャラクターがその特性を発揮することが、中盤のパートナーデジモンの進化の必要条件になる。たとえば「勇気」の特性を備えた太一。他の子供達をリードするような出来事があり、そのことに調子に乗り、また他の子どもたちを引っ張っていかなければならなければならないプレッシャーから、傍若無人な振る舞いをした末に大失敗をしてしまう。落ち込んでスランプに陥り、再び一歩踏み出す勇気がなかなか出ない太一が再び踏み出すその時…!!

特に私が好きな回

私が特に好きな回、上げていくとキリがないが、先程例として名前を挙げた太一にフィーチャーして3話だけ挙げる。

21話 コロモン東京大激突!

つかの間の安息を得ることが出来たけど帰らなくちゃいけないことに気付く太一の話。冒頭太一たちは自分たちがどこにいるのかわからない。少しずつ実感を取り戻していく太一。片時も休まることのなかった冒険を何ヶ月も続けてきてやっと戻ってこられた日常。でもそこには本当の日常はなく、それを取り戻すにはまたあの過酷な冒険の日々に戻らなければいけないことを悟る太一は、断腸の思いで戻っていく…。章と章の幕間の話にしてはあまりに異色で、印象に残る回。そしてこの回の出来事が次の章に大きな影響を与えていくのも鮮やかだ。これだけ異色であるのは、演出を細田守が務めたことが大きい。実写映画のようなレイアウトが普段と違った雰囲気を感じさせる。この回に全54話で唯一彼を起用した制作陣のセンスが光る。

38話 復活!魔王ヴェノムヴァンデモン

愛する人を救うために覚悟を決め、主人公二人が自分の身を犠牲にすることも厭わず強大な敵に立ち向かう話。前半は予言に書かれた出来事が次々と起こる、嵐の前の静けさのような展開。そして予言が完成した時に出現するラスボス、そのスケール感は絶望的だったが、太一とヤマトは諦めていなかった!その先の予言には彼らの逆転の糸口が書かれていたが、それはパートナーデジモンだけでなく彼ら自身の命も危険に晒すものだった!ここ一番でかかる挿入歌「勇気を翼にして」がとてもいい歌なんですまたこれが。「怖くない…といえば嘘になるさ」という太一の言葉がかっこいい!!

48話 爆撃指令!ムゲンドラモン

太一が敵に見つからないように逃げながら探しものを探しまわる話。普段なら危険を顧みない行動を取ることが出来る太一の最大の弱点は実は…!その弱点にまつわる昔の苦い記憶、そして負い目…モノクロの回想シーンに差し込まれる赤がとても印象的で胸が痛い。子どもたちの家庭環境や背景にも踏み込んで、大人にとっても見ごたえのある作品に仕上がっている所以を垣間見ることが出来る。そして見つからないかどうかすごくドキドキする。区画整理された都市で展開する逃走劇、だがそこには誰もいないという奇妙な光景も印象的だ。

終わりに

放映当時3歳だった私には観ていたような観ていなかったようなおぼろげな記憶しか残っていない。ハッキリとした記憶はその2年後の「デジモンテイマーズ」からだ。それでもこれだけ覚えているのは、何年かおきに何度も全話を通して見返してきたからだ。子供をターゲットにして作られた作品とは言え、大人にとっても見ごたえがあって学びがある作品だ。そして私にとっては初めてムック本を買ってもらって、アニメマニアとしての扉をノックされた初めての作品である。アニメというものが、何十人ものアニメーターの手によって、画を一枚一枚描いて作られていることだけでなく、描かれている内容が現実に起こっているわけではないということさえも知らなかったあの頃。アニメを好きな私の原点とも言える作品。毎年8月1日になると思い出す、何度でも夏に見たくなる作品である。今、冒険が進化する。

FODでの視聴リンクはこちらから。

https://fod.fujitv.co.jp/title/5414

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