読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

牝鶏nの微睡 #番外編 鹿児島旅行記

年末に弾丸にて鹿児島に旅行することにした。南九州へ足を延ばすのは前職の社員旅行以来、特に鹿児島は未だ踏まぬ地である。このブログの書き手の一人であるθはかの地で桜島と研究生活を送っているのだが、それが来年には終わるかもしれないとのこと、今年を逃せばもう二度と鹿児島を訪れる機会はあるまいと考え年末の無理をおして鹿児島へと赴いたわけである。
普段、どこかへ旅行などしても写真の一枚残さない性分故旅行記などもとんと書いたことがない。それを「書いておいたら後で見返せて楽しいよ」などと唆され筆を執ることとした。

半端な時間のJetStarにて鹿児島へ飛ぶとわざわざθが空港まで車で迎えに来てくれ、冷たい強風と細かな雨の中挨拶もそこそこに指宿の砂風呂へ直行する。なんせ一泊二日(しかも鹿児島へ着いたのは午後3時)の弾丸旅行、スケジュールは寿司詰めだ。砂風呂では貸し出された浴衣を着て砂に埋めてもらい旅の疲れを癒す。昔、面白半分で土に埋まった友人が「土は重い、動けない」と言っていたのを思い出す。重い。砂は確かにじんわりと温いが、圧迫されていることによる熱のこもり具合で体温を逃がさない感じがする。季節によれば汗だくになるらしいが12月中旬の異常な鹿児島の寒さ(東京は15度あったが鹿児島は何と6度!)で砂から上がると寒い寒いといいながら室内の温泉へ駆け込む。ちなみに右前とは自分から見て左衿が上になることである。砂風呂の時計が違っておりロビーと風呂の時計がずいぶん進んでいたため風呂上がりの待ち合わせでパニックになる、温泉地は瓶詰サイダーがうまい!

その後、θ一押しの「とんかつ竹亭」へ。晩御飯時だったからかそこそこ混んでいたが駐車場もタイミングよく入ることが出来てラッキー。相席だったがすぐに席につくことが出来た。注文から間もなくとんかつ到着。脂が甘い。味噌汁に使われている味噌が何だか白い。初めて口にする味である。鹿児島特有の味噌なのか…?が、その後の他の飲食店で再会することはなかった。

それからθ行きつけの飲み屋「Re:ale」へ。商店街は週末だったこともありいかにも下町という風情で寒さにもかかわらず、大勢人が繰り出している。割と若年層が多い印象で、Re:aleも大賑わいだった。グラスビールが種類豊富でうまい!常連のお客さんが多く、和やかな雰囲気の中コミュ障の僕も楽しく過ごす。セーターが神戸レタスなことで盛り上がる。おつまみを数品お願いしつつバリエーション豊かなメニューを眺める。空腹で来たかったなぁ…ひっきりなしにお客さんが来る、お会計が済んだかと思えばまた新しいお客さんが席を埋めるという塩梅で、2階のお店とは思えない繁盛ぶりであった。

酔っぱらって泥のように眠る。θの来客用布団の品質の高さに衝撃を受ける。起き抜けにθおすすめのアニメ『リコリス・リコイル』の第一話を半覚醒で視聴。淹れてもらったコーヒー片手に映画評論ごっこをする。その後パン屋さんを2つ訪問。上京してからというもの、規模の大きなパン屋に行っていなかったのでテンション爆上がり。焼きたての!パンが!こんなにいっぱい!甘いのもしょっぱいのもより取り見取りや!もう一軒はこじんまりしたお店でハード系のパンがうまい!アンパンにレーズンバターパン、あと何食べたっけ、朝っぱらからあまりの暴食ぶりにθドン引き。

そういえばどこかのタイミングで長渕剛の歌の流れる橋にも行ったけどすごいファンとかいうことでもなくただ車中でも聞こえる音量に大層感心したものだった。

その後フェリーにて桜島へ。初めて車ごと船に積載される。水面が目線と同じ高さにあるのがいいとθ談。車なんか積んでよく浮いてんなと思うが、何かまあそういうものなのだろう…うどんが有名なんだよ!との話で、さっきの暴食はどこへやらかけうどんを啜る。ワンコイン。うまい!風が強い。逃げ込むように船室に入り、近くなった桜島を眺めながら、そこが展望台で、そっちが研究所…などと案内を受ける。やはり詳しい者に詳しい場所を案内してもらうのはよい。θはこのガイドで金を取るべきではと思う。
漁港のそばまで行き、現地の方が利用するという食堂でかんぱち丼を食す。うまい!だがさすがに喰い過ぎでちょっと辛い。なぜこの歳にもなって食欲と胃の容量の折衝が出来ないのか。
一般人が入れる限界だという展望台まで行き、ここでもθの講釈を受ける。いついつの噴火でこういう風に地面が焼けて、なので焼け跡の地相は焼けていないところと違う、広葉樹が生えるまでに至らず針葉樹が生えている…なるほどなるほど、ではマグマが流れたところを見に行きましょう、再び車に乗って海へと続く黒い砂浜のようなところへ。砂粒が小さい。波が来るぎりぎりの地面を促され掘ってみると、なんと温かい!温泉だ!浜辺の石をひっくり返してみるとこれもまたしっかり温かい。国立公園なので、たとえ温泉を掘っても原状回復しないけない、石ころ一つ持って帰ってはならない(そりゃそうだ)との話で、渋々黒い砂浜を後にする。鳥居が噴火の影響で地面に埋まってしまっているところを見に行く。噴火の規模の大きさを実感する。道中、中学校に「やればできる」の横断幕がかかっているのを見かける。墓地のそばも通った。個々に小さな小屋に入っている。火山灰が飛ぶので墓石が汚れるからだそうだ。いつまた大きな噴火がありすべてが飲み込まれるかもわからない、自然になすがままのこの土地でそれでも生きていくことを選択するのはどういった訳なのか。生まれてこの方、故郷などない根無し草の僕には想像することすら難しい。

空港につく前にθの研究室のメンバーだという方と合流し、皆で空港に向かう。空港内の山形屋で鹿児島県民のソウルフード、かた焼きそばを食す。長らくの車移動でリバースしないまでもすっかり酔ってしまいどうなるかと思ったが全然何の問題もなくかた焼きそばを平らげる。テーブルに三杯酢があり疑問だったが、かた焼きそばに酢、合う。うまい!バシャバシャかけて食す。昔はピッチャーにて三杯酢が提供されたとのこと、納得である。

旅行記なんて書いたことないからむずかったなぁ。
θ、僕の一泊二日を信じがたいほどに充実させてくれてありがとう、もうしばらく僕はこんな充実した週末を送ることはできない。ずっと運転してくれていたのに最後車酔ってごめん、三半規管を鍛えておくよ。それから、なくしたと思っていた運転免許は年末転居の際に本棚の裏から出てきた。今度は僕が運転しよう、どこでかはわからないが…
そして楽しく美味しい鹿児島、ありがとう!