はじめに
※この記事は「鬼滅の刃」「涼宮ハルヒの憂鬱」「魔法少女まどか☆マギカ」「おジャ魔女どれみ」のネタバレを含みます。
昨年10月に公開された「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は国内の映画史上最大の興行収入を記録するメガヒットとなった。劇中で上弦の参・猗窩座が敵対する煉獄杏寿郎に対して発した「お前も鬼にならないか、杏寿郎」というセリフは、その汎用性の高さからインターネット上でスラングとして流行し、猗窩座の名(迷?)スカウトぶりが広く知られることとなった。
公開から1年を経た2021年10月、私は「涼宮ハルヒの憂鬱」を初めて観た。主人公涼宮ハルヒがキョンやその他の生徒を強引に集めて「SOS団」という部活を立ち上げる。彼女の行動は部活を立ち上げる場面に限らずとても強引で、誘う相手の事情をほとんど鑑みていない。しかし彼女の持つ能力は凄まじく、本人が潜在的に不満なことがあると世界に悪影響を起こすため、巻き込まれた人間はなるべくハルヒの機嫌を損ねないように行動しなければならない。私は強引なスカウトだな、仲良くなれなさそうだな…という感想を抱いた。
その翌月の11月、私は再び凶悪なスカウトと出会うことになる。そう、「僕と契約して魔法少女になってよ」でおなじみ、「魔法少女まどか☆マギカ」のキュゥべえである。キュゥべえは道理に適わない奇跡を起こす代わりに魔法少女となって、人間を死に至らしめる魔女を退治する任務を果たしてほしいと告げる。しかしキュゥべえは重大事項を説明せず、魔法少女に緊急事態が生じた時になってはじめて「聞かれなかったから」と後出しで説明するのだった。ここまでの三者の中で唯一「契約」という言葉を使用しているにもかかわらず、そのやり口は悪徳業者そのものである。私は憤りすら覚え、猗窩座もハルヒもこんなにひどくはなかったよなあと、それまでのスカウト行為をするキャラクターを思い出していた。
そこで、本稿では各キャラクターが行ったスカウト行為を振り返り、本当にキュゥべえが最悪なスカウトなのかを検証する。なお、番外編としてこの三者に加え、魔法少女つながりで「おジャ魔女どれみ」で主人公のどれみたちを魔女見習いにしたマジョリカもスカウト適性の比較対象になってもらう。
評価基準
各キャラクターの行いを振り返る前に、「悪いスカウト」という言葉が漠然としているので、評価基準を設ける。私が考えた評価基準は以下の通りである。
- 何に加入させようとしているか
これは以降の項目の前提条件のようなものである。彼らがうながすのは、程度の大きさこそあれ人間の姿をしたまま属性が変わりマイノリティとなる行為だが、本稿ではそのグループに加わることを「加入」と表現する。 - 加入のメリットとデメリット
- 加入することへの社会的評価
- 拘束時間・契約期間
2-4は加入行為そのものへの評価である。作品から伺えるすべての情報を勘案した時に、その加入行為が是なのかを判定する。 - 加入のデメリットの説明
- 勧誘者のモチベーション、強迫行為の有無
- キャンセル規定
- 加入者の年齢と相談相手の有無
5-8は加入候補者の権利が守られているかの評価である。2-4で検討した項目が契約前に示されていたか、強引な勧誘行為がなかったか、やはり辞めたくなったときの対応はどうなっているか、判断能力を十分に持ち合わせていない者を勧誘していないか、勧誘者が勧誘せざるを得ない状況であり不当な勧誘につながっていないかを評価する。 - 前科
最後にこの勧誘行為に巻き込まれたものがどのくらいいるかを評価する。悪い言い方をすれば前科何犯かであり、本稿では人数が多いほど悪質であると定義する。 - 勧誘者と加入者の関係
勧誘されたものが加入した場合、勧誘者と加入者の関係は続く。加入後に勧誘者が加入者を本質的にどう認識するのかを評価する。 - 勧誘対象の目利き
優秀なスカウトは素質のある人物を見抜いて勧誘する(プロ野球のスカウトはこの能力がほぼ唯一の能力判定基準だろう)。各キャラクターが無差別に声をかけているのか、はたまた素質のある人間のみ選別して声をかけているのかは、無用な犠牲を産まずに済んでいるか、とも言いかえられ、組織側からの評価だけでなく、誘われるものからの評価にもなる。
マジョリカ(おジャ魔女どれみ)
1. 何に加入させようとしているか
魔女見習い。9級から始まり1級の見習い試験を合格することで魔女になれる。魔女は基本的にどのような魔法も使え、寿命が数百年に延びる。
2. 加入のメリットとデメリット
メリット:魔法を使える能力を手に入れることができる。
デメリット:禁則魔法を使った場合のペナルティがある。魔法を使うためにはMAHO堂での営業行為を行わなければならない。人間から魔女(見習い)であることがバレて言葉にされると魔女ガエルになってしまい、見破ったものを魔女にするまで元に戻れなくなる。
寿命が長くなることは、その分人生でできることが増えるなどの一般的な長寿命のメリットを享受できる一方で、その寿命の違いから人間との交友関係を維持するのが困難である。
3. 加入することへの社会的評価
先述した寿命の違いから仲違いする事例があったり、善意で提供した魔法を悪用されることで魔女が人間に不信感を抱いたりする事例があった。(先々代女王の経緯を再確認。)魔女が自身の正体を見破られると魔女ガエルになってしまうので、魔女が人間に自ら魔女であると名乗ることはなく、その結果魔女の存在を知る人間はほとんどいない。
4. 拘束時間・契約期間
基本的に営業行為を行ったりハナちゃんの世話をしたりする放課後と休日の数時間と、定期的に見習い試験を受けるための深夜の行動である。契約期間は魔女になり亡くなるまでの数百年間である。
5. 加入のデメリットの説明
マジョリカは、魔法を使うことのルールを丁寧に説明していた。寿命が異なることなどは、魔女になるかどうかの意思決定の際まで問題ではなく、それまでにいろいろな魔女と触れ合わせるなどの対応で各人の判断を促している。
6. 勧誘者のモチベーション、強迫行為の有無
魔女は人間から魔女であると見破られると魔女ガエルになってしまう。魔女に戻るためには見破った人間を魔女見習いから魔女に育てて、その魔女が師匠である魔女ガエルを魔女に戻す魔法をかけるしかない。という旨の説明を人間にすることで勧誘しているため、勧誘の切実性は高い。強迫行為をする魔女は多くないと見受けられ、泣き寝入りして魔女ガエルになる事例が多いが、知人が魔女見習いであると知ってしまった人物に対しては、口を滑らせてその知人を魔女ガエルにするリスクを排除するために半ば強引に魔女見習いにされる。
7. キャンセル規定
魔女見習いの期間中、魔女になるまではいつでも魔女見習いをやめることができる。しかし、作中での描写はないが、6のとおり、魔女ガエルになった師匠が様々な手段で阻止することは可能である。
8. 加入者の年齢と相談相手の有無
勧誘対象は魔女であることを見破った人間であり、年齢制限はないが、劇中で勧誘された最年少はぽっぷ(5歳)であり、判断能力はないと言ってよいだろう。また3で説明したように、親に相談することは許されない。
9. 前科
劇中でマジョリカはどれみ、はづき、あいこ、ぽっぷを魔女見習いに勧誘した。4人。それ以前に弟子をとったことがあるかは描写されていない。
10. 勧誘者と加入者の関係
魔法を授ける師匠と弟子の関係、魔女界での育ての親といって差し支えない。マジョリカは魔女見習いそれぞれの意思を尊重する。
11. 勧誘対象の目利き
「勧誘者自身を魔女と見抜くかどうか」があるいみ適性試験のようになっている。どれみはもともと魔女が好きで、魔女の特徴を本で読んで知っており、マジョリカがその特徴にことごとく当てはまったから見破ったという点で素質があったといえる。
しかしこれはいわば適性試験の試験官となる魔女たち自身の脇の甘さによって、この適性試験が用をなさなくなる事例がある。どれみに見破られたマジョリカも、まあ魔女の典型例みたいな格好をして「魔法堂」を名乗っていればいつ見破られてもおかしくない。たとえば一回グッズを買ったお客さんが帰ってきて「マキハタヤマさん*1のグッズの効き目すごかったです~!ひょっとしてマキハタヤマさんって本当に魔女なんじゃないですか~?」なんて軽く冗談のように言っただけで見破られた判定になって魔女ガエルになっていたかもしれない。そもそも魔女とバレてはいけないというのに魔法グッズ販売店をやるとか、危ない橋渡りすぎである。まあその他にもどれみは跡をつけられて都合3人もの魔女見習いを生み出しているので、やはり適性試験としてはザルである。
ただし魔女見習いが魔女になるまでには魔女試験をクリアしなければならない。このハードルが、魔女見習いに魔女としての特性があるかじっくり見極める機能を果たしているので、スカウトが目利きでなくても良いのかもしれない。この場合は魔女見習いに素質がなかった時に勧誘者も不利益を被る(魔女ガエルから復帰できない)のである意味おあいこである。
猗窩座(鬼滅の刃)
1. 何に加入させようとしているか
鬼舞辻無惨に仕える鬼。
2. 加入のメリットとデメリット
メリット:驚異の攻撃・回復能力を手に入れ、寿命も伸びる。無残の血が分け与えられるほど強くなる。
デメリット:日光に当たると死ぬ。鬼舞辻無惨の気に入らないことをすると抹殺される。そのため鬼舞辻無惨の行動方針に従わなければならない、すなわち人間に危害を加えなければならない。無残の血を分け与えられる過程で死に至る恐れがある。また無残の血が分け与えられるほど死のリスクも高まる。
3. 加入することへの社会的評価
人間は鬼を恐れており、鬼を滅亡させるための鬼殺隊が作られている。人が鬼になるということはすなわち、人間から命を狙われる存在になるということで、評価は最悪だ。
4. 拘束時間・契約期間
鬼舞辻無惨のお呼びがかかったらすぐに行動しなければならない。また契約期間は一生である。
5. 加入のデメリットの説明
鬼とは何たるかを知っている鬼殺隊メンバーを誘っていることもあり、デメリットはあまり説明されていない。まあ本人は良い面だけを唱えているのであまり良心的とも言えない。
6. 勧誘者のモチベーション、強迫行為の有無
猗窩座は強いものを好んでおり、強い者を失うことが惜しいため。どうやら生前の記憶も関係しているようだ。もしかしたら同僚に気が合うものがいないという寂しさもあるかもしれない。猗窩座は鬼殺隊を攻撃する命を受けて現れたので、拒否すれば殺害せざるを得ないと脅迫する。実際に拒否した煉獄さんは殺害されてしまった。
7. キャンセル規定
鬼から人間に戻りたいという人物の描写はないので不明。しかし鬼舞辻無惨の血を分け与えられることで鬼になるので、加入行為には不可逆性が伴っている可能性がある。また、そうでないとしても、鬼舞辻無惨に人間に戻りたいと申し出たらその時点で抹殺されそうだ。
8. 加入者の年齢と相談相手の有無
鬼になる年齢に規定はないが、煉獄さんは20歳であり、一定の判断能力はあると見てよいだろう。煉獄さんは相談するまでもなく拒否しているので相談者の有無について検討する必要はない。しかし鬼殺隊も、命の危険が大いにあるにもかかわらず、10代の少年少女を多数採用しており、業が深い。
9. 前科
ファンブックいわく、勧誘して鬼になった人もいてその中に強者になれそうな人もいたが、皆死んでしまったそうだ。冨岡義勇も勧誘されている。ていうかこの記事を書くにあたってシーンを見返してみたけど、猗窩座が登場してから煉獄さんを誘うまでわずか4分…短くない?距離詰めるの下手くそか?(笑)
10. 勧誘者と加入者の関係
加入者が強者である限り、お互いの能力を切磋琢磨する、同僚でありライバル。
11. 勧誘対象の目利き
猗窩座はマッチアップして強いと判定した者を勧誘している。昔スカウトした者は全員死んでしまったので見る目がなかったかもしれないが、近年スカウトされたものとして明示されているのは煉獄さんと冨岡義勇だけなので、現時点では目利きが良いものと推測される。本稿では勧誘者としての悪質性を議論するので、あまり悪質じゃないことになる。が、勧誘しない相手は無視するんじゃなく殺してしまうので、勧誘者として害が少ないとかそういう問題じゃないかもしれない。
涼宮ハルヒ(涼宮ハルヒの憂鬱)
1. 何に加入させようとしているか
本人が主宰する新設の部活、SOS団。「S:世界を、O:大いに盛り上げる為の、S:涼宮ハルヒの、団」の略称で、宇宙人や未来人や超能力者を探し出して一緒に遊ぶことが活動目的。非公認団体で実質的には文芸部を乗っ取っている。
2. 加入のメリットとデメリット
退屈な日常に起伏を与えてくれるかもしれない。宇宙人や未来人や超能力者と遊べるかもしれない。男子部員にとっては、朝比奈さんとお近づきになれるかもしれない。逆に朝比奈さんにとっては変な男子生徒がお近づきになるかもしれない。部員は涼宮ハルヒの意に沿う行動をしなければならず、拒否すると世界が悪い方に進む恐れがある。主義主張の異なる宇宙人(、未来人、超能力者)と対立することで、自分の命が危険にさらされるかもしれない。
3. 加入することへの社会的評価
同級生からは涼宮ハルヒが変人だと評価されており、SOS団に加入した生徒もその影響を受けた評価になる。
4. 拘束時間・契約期間
涼宮ハルヒが活動している時間帯はいつでも呼び出される可能性がある。在学中。
5. 加入のデメリットの説明
ハルヒの目にデメリットなんて見えていない。
6. 勧誘者のモチベーション、強迫行為の有無
ハルヒ本人が面白い体験をしたいという動機による。選択権は実質的にない。
7. キャンセル規定
ハルヒが強権政治を敷き続ける限り、選択権はない。学校を辞めるしかない。
8. 加入者の年齢と相談相手の有無
加入者はいずれも高校生である。部活を選択するのは一般的に行われているため、判断能力には問題がないだろう。相談の余地はない。
9. 前科
キョン、長門有希、朝比奈みくる、古泉一樹の4人を加入させた。前科4犯。
10. 勧誘者と加入者の関係
名目上は団長と副団長/団員という関係だが、部員らは自身がハルヒの望む結末を得るために行動を強制させられる存在であると認識している。
11. 勧誘対象の目利き
キョン以外の部員は宇宙人、未来人、超能力者を過不足なく引き当てており、目利き能力はダントツである。キョンについては素質があるのかどうか、作中でも議論の的になっているが、古泉曰くキョンと出逢ってからハルヒが閉鎖空間を出現させる頻度が下がっているので、本人が精神を安定させるのにこの上ない存在であることは間違いない。
キュゥべえ(魔法少女まどか☆マギカ)
1. 何に加入させようとしているか
魔法少女。
2. 加入のメリットとデメリット
メリット:理論上不可能なことでもなんでも一つ願いを叶えることができる。魂と肉体の分離により痛覚が緩和される。ソウルジェムが無事である限り理論上不死身。
デメリット:魔女を倒す使命を得て、倒した報酬を定期的に得なければ死んでしまう。また魔女に敗れると死に至り、一般に受けられる葬儀を受けられず行方不明者として処理されることがある。魔法少女になった際に授けられるソウルジェムが人間の魂そのものであり、これをおおよそ100m以上手放すと肉体は機能を停止し、死体同然になってしまう。あるいは条件を満たすと魔女になってしまい、人間に危害を加える存在になってしまう。
3. 加入することへの社会的評価
魔法少女は周囲に認識されていないので評価なし。
4. 拘束時間・契約期間
拘束時間は自由だが成果主義。契約期間は一生。
5. 加入のデメリットの説明
最初に提示されたデメリットは「魔女を倒す使命を得る」程度であり、他のデメリットはいずれも重大であるのに基本的に事態が起こってから説明される(しかも起こる)。
6. 勧誘者のモチベーション、強迫行為の有無
勧誘者は魔法少女が希望を絶望へと変化させ魔女なるときの相転移エネルギー摂取によって宇宙の寿命を伸ばすことを目的としている。この事の説明など多くの重大事項の説明は抜けているが、加入を矯正する行動は一切なく、この点に限っては良心的である。そのため加入までのタイムリミットもなくまどかはじっくり検討することができた。
7. キャンセル規定
最初に利益を享受させるという性質上、キャンセルすることができない。
8. 加入者の年齢と相談相手の有無
思春期の女子が最も相転移エネルギーを多く放出するという理由から、加入者を劇中では中学生に絞っている。思春期に狙いを定めている時点で判断能力がない人々がターゲットとなっている。先に魔法少女になった知り合いに相談することができるが、相談相手の告げる事実が非現実的すぎて相談の意味がないことがある。
9. 前科
キュゥべえは地球外生命体であり、肉体の寿命が尽きても死なない不死身状態である。劇中で登場する魔法少女は鹿目まどか、暁美ほむら、巴マミ、美樹さやか、佐倉杏子の5人。しかし全ての魔女はもともと魔法少女であり、魔法少女を生産するのはキュゥべえなので、現存する魔女の数だけキュゥべえは勧誘実績を重ねてきたと考えて良い。古くは卑弥呼、クレオパトラ、ジャンヌ・ダルクなどとも契約したことになっている。
10. 勧誘者と加入者の関係
キュゥべえは魔法少女をエネルギーの摂取対象としか認識しておらず、人間と家畜の関係と同様に捉えている。
11. 勧誘対象の目利き
本作品を一度観た限りでは、キュゥべえの目利きが優れているかはわからない。たしかに過去に素質のある者を魔法少女に仕立て上げてきた実績はあるが、さやかは比較的素質のない方として描かれていて、そういった少女も魔法少女にされてきただろう。キュゥべえにとって誘う相手を選ぶ基準は、素質があるかよりも、ただめぐり合わせがあった者であるというだけであるように見受けられる。したがって素質があるとは考えがたい。
考察
これまでにの分析を踏まえ、項目2-10について、6点を4人に配分する形で点数化する。点が高いほど良心的なスカウトである。2については、比較的ローリスクローリターンな魔女見習い/SOS団員と、比較的ハイリスクハイリターンな鬼/魔法少女に分けられる。筆者は比較的ローリスクローリターンを好むので少し点数を高くした。3については、ネガティブか評価なしのいずれかなので評価なしの魔女見習い/魔法少女が高めになった。4については在学期間に限られるSOS団が最善、試用期間のある魔女見習いが次点。6は加入しない場合殺される鬼が最低評価である。拒否権のないSOS団が次点、入らない場合の不利益を訴える魔女見習いが3位。この点に限ってはキュゥべえが良心的である。そもそもキュゥべえは一応話し合いという形態をとっている。人間にとって重要な事項を重要と認識しないという認識の齟齬が、多くの場合において低評価につながっている。7については、不可能である魔法少女、選択肢はないことはないが実質ない鬼とSOS団、魔女になるまではキャンセルできる魔女見習いとで評価が開いた。8については基本的には実際に誘われている人物の年齢と責任の重大さに基づく。9については人数がそのまま点数に変換された。10については加入したものが勧誘者に対して地位が低いほど評価が低いので、家畜同然の魔法少女は圧倒的に低い。11については、ハルヒの目利き力の高さが目立つ結果となった。
項目 |
マジョリカ |
猗窩座 |
||
2. 利点欠点 |
2 |
1 |
2 |
1 |
3. 社会的評価 |
2.5 |
0 |
1 |
2.5 |
4. 拘束/契約期間 |
1.5 |
1 |
2.5 |
1 |
5. 欠点の説明 |
3 |
1.5 |
1.5 |
0 |
6. 脅迫の有無 |
1.5 |
0.5 |
1 |
3 |
7. キャンセル |
4 |
1 |
1 |
0 |
8. 加入者年齢 |
0 |
2 |
2.5 |
1.5 |
9. 前科 |
1.5 |
3 |
1.5 |
0 |
10. 関係性 |
2.5 |
2.5 |
1 |
0 |
11. 目利き |
1 |
1 |
4 |
0 |
合計 |
19.5 |
13.5 |
18 |
9 |
結果、キュゥべえが圧倒的最下位となった。依然主観的な部分は残るが、最初に抱いた感覚がおおよそ正しいことが示唆された。
おわりに
よくよく考えると、実に多くのアニメにおいて主人公は勧誘するかされるかしている。ここで紹介した他にも「けいおん!」では、主人公の平沢唯が部長の田井中律に人数が少なく廃部寸前の軽音楽部に勧誘される。「小林さんちのメイドラゴン」では、トールが酔っ払った小林さんに誘われて小林さんのメイドになる。「ONE PIECE」ではルフィが航海した先で出会った人物を自分の海賊団に誘う。人が人を誘うという行為は誘われたものの人生が変わるだけでなく、誘ったものの人生も左右する重大局面である。それは現実の人生でもそうである。
これらの作品のなかで勧誘に乗るかどうかの判断にずば抜けた時間をかけているのがまどかである。キュゥべえが判断を急かさない点のみにおいて良心的で、他の要素は全て悪質なスカウトなのは、まどかが勧誘に乗るか全12話のうち11話目までじっくり考えるための必然だったのかもしれない。
これを読んだあなたは本稿で紹介したスカウト行為やその基準を省みて、勧誘を受ける時は注意深く、勧誘する時は誠実に行動してくれれば幸いである。
追記
と言う記事を下書きして温めていたら、まどマギ10周年記念クレカが発売するという発表があり、よく説明を読んだユーザーによって、リボ払い専用カードであることが判明した。しかも宣伝ツイートのリンク先にはその旨が表記されてなかったそうだ。まさにキュゥべえのスカウトぶりを再現した原作オマージュカードである!!
…なんて冗談を言っている場合でもない。月額リボ払いの上限額をカードの限度額と同程度まで引き上げることで対処できるそうなので、利用を検討されている方は参考にしただければ幸いである。やっぱり多くの人にその勧誘が問題ないものか検討してもらう仕組みが必要だね。
2021/11/5提出 2021/11/21公開
*1:マジョリカの人間としての仮の名。