読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

羊文学の好きな曲を語る

はじめに

1月に「光るとき」と出会ってから先日新譜「our hope」を手に入れて今に至るまで、今年出会ったアーティストの筆頭を独走しているのが羊文学である。これまでに「光るとき」と最初に借りたアルバム「you love」のレビュー記事と新譜「our hope」のレビュー記事を書いた。

yominabe.hateblo.jp

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しかし、新譜と出会うまでにそれ以外のアルバムも借りて好きになった曲がたくさんあるので、本稿では曲調でジャンル分けしながら好きな曲の好きなところを次々と話していきたい。その幅広さから、羊文学を聴いたことない人にも気に入る曲が見つかると信じている。

この記事で紹介する曲のプレイリストです。

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各アルバムとの出会い

本題に入るまでに私が各アルバムと出会った流れを整理しておく。

最初は1月15日にデジタル購入した「光るとき」。続いて最新EPの「you love」とメジャー1stフルアルバムの「POWERS」をオンラインレンタル。たしかマヨイガYouTubeで聴いて、「光るとき」以外の曲にも興味を持ったのがアルバムに手を出すきっかけだった。それでとりあえずメジャーデビュー以降の2枚を借りて、2月3日から聴き始める。最初に聴いたときにはまだ注目していなかった「1999」、歌詞の閲覧回数ランキングで上位なのを見て興味を持ち聴き直して好きになる。

ここまでに聴いた曲で1本目の羊文学記事を書き、私が聴き始める半年くらい前に羊文学が好きと言っていた友人に、羊文学にハマってブログ記事を書いたことを報告したところおすすめされたのが「オレンジチョコレートハウスへの道のり」と「ざわめき」。3月15日にレンタルしたCDがようやく届き、聴き始める。

その後、先述した友人がドラムコピーをしたという「step」が収録された「若者たちへ」と、Apple musicで聴いて気に入った「ロマンス」が入った「きらめき」も借りて、「our hope」と一緒に4月25日に聴き始めた。

ここまで来たら当然、残るインディーズからの1st EP「トンネルを抜けたら」も聴いてみたいが、とりあえず今聞いている曲への熱が一段落するまで取っておこうと思っている。というわけで、本記事に「トンネルを抜けたら」収録曲は登場しない。

 

1.リフレイン

曲中に繰り返し出てくるフレーズが頭に残り、気づくとまた聴きたくなっている曲シリーズ。ライブ映えする曲揃い!

変身

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のらりくらりする部分と尖った部分の緩急が心地良くてやみつきになる。Aメロは縦ノリ、Bメロは高音が気持ちいい、サビは早すぎないが快調。「もう~すぐ~せか~いが~…」の部分はクネクネしながら一緒に歌っちゃう。その後の梯子外しド直球悪口大好き(ゲス顔)。こないだ現時点でカラオケで歌える曲の中で一番楽しかった。

Girls

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イントロのコードリフがまずかっこいい。タイトルの通り女子たちの裏表ある人間関係にうんざりして退廃的になっている曲と歌詞が良い。鬱憤を発散できるメロディライン。「どうせ人はひとりだよと やけになったあの人はある意味 正しい」って地味に核心をついてるところが、ただ悪口を並べてるのとはわけが違う。赤い公園の「絶対的な関係」と合わせて聴きたい一曲。

人間だった

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珍しくSFチックな世界観の曲。「忘れないで 自然は一瞬で全てをぶち壊すよ」「人間が神に なろうとして 落ちる」…間奏のモノローグが最も印象に残る。何か学生演劇のような雰囲気を感じるような、バンド名の通り文学性を感じるというか。そこにのっかるディレイ付きのギターがかっこいい。サビのアルペジオも良き。

天国

直前にどんな曲を聴いてても流れをぶった切って気分を切り替えさせてくれる唐突なイントロが爽快。「そっちはどう?調子はどう?」のフレーズがずっと離れない。何が良いってこのフレーズのメロディはずっと変わらないのにコードや演奏は変わっていってちょっとずつ高揚していくところだ。「昼寝でもする感じ?(↑)」とかのメロディのメインストリーム外れてます感はダントツで、そこがめちゃめちゃ好き。こないだLINE電話しながら羊文学を流してたときにこの曲も流れて、間奏の電話のくだりになったとき不思議な感覚に見舞われた。電話のくだり前のギターリフも絶妙に気持ち良いツボを押してくれるのが良き。

ちゃんと曲名と歌詞を照らし合わせたら、それぞれ暮らしが快適で天国のようだと電話で仲良い2人が近況報告している歌なわけであるけども、その天国が”クーラーガンガンな中布団にくるまってアイス食べる感じ”なのと”最愛の猫とお酒飲んで昼寝でもする感じ”ってなんとも庶民的なのが笑う。たしかに後者の「最愛の猫と一緒」「昼から酒飲む」「昼寝する」の三連チャンはポイント高い(笑)てかこの歌の歌詞、これに加えて「花火見える」「星は見えないけど新宿は夜も明るい」「お体にはどうぞ気をつけてね」しか情報量ない(笑)

…とひとしきり笑ったあとで気づくのだ。こうして中身も他愛も無い話で長電話できる相手がいることこそが天国なのだと。それを後半「そっちはどう?」「調子はどう?」の無限ループで表現しているのだと。深い。

2.かっこいい

リフレイン曲を聴いてもらっただけでも、羊文学がかっこいいバンドだということは十分に分かってもらえると思うが、このカテゴリに入れた2曲は群を抜いてかっこいい。どっちも動画がないのもったいない。探し出して聴いてみて!!

絵日記

「天国」からのこの曲の流れでご飯が3杯食べられる。ドラムが終始かっこいい。イントロのソロも良いし、サビでのライドシンバルの根本フィルインが特に好き。ちょっとやくしまるえつこみあるサビのメロディに乗っかった「アイスクリームは溶ける 少年は空を指差す」の耳触りの良さと情景描写力の高さだけですでに、並の曲よりも充分満足なんだけど、一度しか出てこない捲し立て大サビがめちゃめちゃかっこいいのよ!!!それまでの2分32秒で歌詞カード上で236文字分の歌詞だったのに、そこからわずか14秒で85文字、1秒あたりの文字数が1.55文字から6.07文字と約4倍に!

ていうか全体の歌い出しとこの捲し立てパートの歌い出しの歌詞、一緒だったのね!!こういう思いの溢れている様子の表現技法は新鮮で圧巻だった!カラオケで歌いたいのに入ってない!!…よくよく考えたらこの捲し立てパートもちょっとずつコード変わりながら歌ってるんだよね、すごすぎない…?!でコード投稿サイト見てみたらそうか、それまでのサビのコード進行とほぼ同じのを倍速で(一小節ずつだったのを半小節ずつで)弾いてたのか!カッコよ!!!

この大サビが来るまでソワソワする感じ、これだけのサビが1回しか出てこないその贅沢さがTHE BLUE HEARTSの「情熱の薔薇」と同じ緊張感を曲全体に与えてくれる。ただ情熱の薔薇と違うのは、大サビが終わったあとも続くのかな?と思わせておいてあっけなく終わってしまうところ。そのあっけなさもまたヘビロテポイントを上げてる。再生回数の最大瞬間風速は羊文学一。

電波の街

「パーティはすぐそこ」からのこの曲でご飯が2杯食べられる。「いつもブル(ー)」「孤独なボ(ーイ)」「泣いてるガ(ール)」「どこまでだ(って)」「見えないで(~んぱ~)」「コンクリー(トビルの間から)」「(あ)こがれるボ(ーイ)」「幸せだ(って)」などなど、メロディ中に度々登場する5連符が良き。とにかくベースもギターもベンベン弾いててドラムも規則的にエイトビートを刻むのがかっこいい。最後のAメロ手前のミュート音も好き。「our hope」レビュー記事参照。

3.昼ゆる

さてここからは、羊文学の特徴とも言える穏やか曲シリーズ。穏やか曲だけでも、昼間に聴くのが心地良いゆったり曲「昼ゆる」、夕方から夜にかけて聴くのが心地良いゆったり曲「夜ゆる」、歌詞の内容とか演奏とかに心揺さぶられる「じーん」、寄り添ってくれて背中を押してくれる名曲「寄り添い」という4種類にざっくり分けられると思う。前2つは比較的曲の心地よさが先にやってくる、後ろ2つは比較的歌詞のメッセージ性がメロディに乗っかって心に訴えかけてくる曲揃い。メロディが暑苦しくなくても心動かされるのがこのバンドのいいところ。

なつのせいです

30℃弱くらいの暑すぎない日に扇風機に当たってアイスバーをなめながら聴きたい。スイカでも良い。清涼感あるリバーブのかかったギターのアルペジオがそういう気分にさせるのかな。「2022年1-2月に出会った曲たち」参照。

金色

うだうだしたいときに一緒にうだうだしてくれる曲調、でも内容は「満足してるよ 人生の大体の部分では」現状を全肯定してはくれない。どっちに乗るかはあなた次第。「はずでもないってことくらい~」のパートで曲調もそれまでのにぎやかな感じからギターがいなくなってリズム隊だけになり、バックステージの仄暗い感じが出ているのが良き。「our hope」レビュー記事参照。

ラッキー

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前日にこんなことしようって計画してたのに、結局自分ちでうだうだして午前中を終えてしまった時に、この曲を聴けば仕切り直しできそうな気がする。「our hope」レビュー記事参照。

4.夜ゆる

ハイウェイ

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イントロのミュートを効かせてちょっとくぐもらせたギターで静かに始まる。「随分と長く 僕ら走っていたけど」のメロディで、何故か安心感が得られて穏やかな気分になる。Bメロのちょっと下がり気味なメロディ進行が耳に残る。サビは割とオーソドックスなつくりだと思うけど、演奏が魅力を増している。間奏の歪んだギター良き。2022年4月の再生回数1位でした。

夕凪

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イントロの左右に振られる「ハッハッハッハッ…」が耳に残って印象に残りやすいが、そこから先は素直に入ってきてくれる心地よいメロディ。生理食塩水のような体へのフィット感。アルバムが違うし他にセットにしている人は多くないかもしれないけど、私は「ハイウェイ」とセットで聴くのがお気に入り。なんでセットで捉えたくなるんだろうと思ったら、ミュートギターで始まるところが一緒だからかな!

大サビ前のドラム・ボーカル・ギターだけになるところ良き。でもベース入りももちろん心地よくて、やはりベースの存在大事だなと思わされる。6分弱という長さを全く感じさせない。大体1曲4分くらいだろうと思って時計代わりにプレイリストを流していると、時間が押すことがたまにある。2022年4月の再生回数2位でした。

1999

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羊文学で現時点で一番人気の曲。イントロのコーラスが印象的なのでフレーズリフレイン系にカウントするのもありだと思ったけど、こちらにカテゴライズさせてもらった。クリスマスというテーマに合わせたような神聖さが曲全体にあるのが素敵。コード進行はイントロから殆ど変わらないのにこれだけの展開にできるのだからすごい。

5.じーん

羊文学は切ないラブソングもお得意、というのを集めた最初の3曲と、歌声とメロディが心にダイレクトヒットする異質な1曲。

恋なんて

アルペジオが繊細で良き。サビに入る手前でちょっと静かになるとことかもいい。恋に支配されまいとしても支配されてしまう悲しき人間の性にわかりみポイント満載。歌詞は繊細な感じだけどゴリゴリバンドアレンジなのが良い。

歌詞だけじっくり読み返したら、シチュエーションは「勝手にしやがれ」と一緒で、それを羊文学フィルターを通してみてみるとこうなるんだなあと思った。2番のAメロが早口になるところ、歌に乗っかったときの耳触りの良さがまず良いんだけど、内容をちゃんと聴いてみると、1番は多分出ていかれた日に頭の整理がつかなくてとにかく目の前でできることをちょっとずつやってたけど、2番で頭が整理されてきてぐるぐる考え始めるフェーズになったんだろうなというのが伺えて、早口になるのも必然だということに気づく。極めつけはラスサビ前の「はぁー」。ぐるぐる考えた末に出た叫びだというのがひしひしと伝わってきて感嘆する。

ミルク

じわじわと心に響いていくホットミルクのような(タイトルに結びつけたこじつけ)一曲。曲名は「覆水盆に返らず」の英訳"It is no use crying over spilt milk."に由来するらしく、たしかに歌詞も破れてしまった恋に諦めをつけようとしている内容である。サビの優しいシャウトは歌詞に説得力を持たせて染み渡る。スネアの角を打つアウトロが素敵。

夜を越えて

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失恋曲三連発。「幸せはいつもそこにあるのに気づかない 欲しいものばかりだね」がわかりみすぎる。なんで人間の欲には際限がないんでしょうかね。夜空に溶けて見えなくなっていきそうなアウトロの歌声が切なさを増幅させる。カラオケで歌ったら存外高得点が出た。

キャロル

泣きメロディの宝庫。モエカさんのボーカルに感じられる繊細な揺れが、これまでで一番神がかっている気がする。「our hope」レビュー記事参照。

6.寄り添い

マヨイガ

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初めて聴いたのは夜中のことだった。高校生と思しき子たちがコメントしていたのが印象深い。feat. 蓮沼執太フィルバージョンが他で聴けない楽器構成で結構気に入っております。「2022年1-2月に出会った曲たち」参照。

光るとき

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初めて出会った曲であり最も思い入れある曲。タイアップだからたくさんボツになって苦労したけど、間奏のリバーブマシマシギターは羊文学としてのプライドが入れることをこだわらせたとのことだった。そのこだわりがこうして私の琴線に引っかかってたくさんの素敵な曲と出会わせてくれるきっかけになったので感謝である。まあ曲の持つ魅力とそういうこだわりを持つ人々がやっているという事実は地続きなのだと思う。最初に出会ってめちゃヘビロテして、私の累計の再生回数はダントツなのに、他の曲に勢いを越されて、月間賞を逃し続けてるのが残念。「2022年1-2月に出会った曲たち」参照。

7.ポップ

インディーズでシューゲイザーな曲が特徴的な羊文学にも、ポップでテンションの上がる曲が結構あって、逆にそれがいいアクセントになっている。

パーティはすぐそこ

疾走感と裏声混じりのメロディやコーラスの様式美。「our hope」レビュー記事参照。

あの街に風吹けば

ニコニコしてリズムを取りながらエセ指揮者みたいに手を振っちゃったりしてウキウキしながら歩いちゃう曲。Aメロ前半まではミュート単音弾き、後半からコード弾きへと徐々に盛り上がっていき、サビでメロディが最高音に達するまでのボルテージの揚げ方が心地良い。羊文学で初めて出会ったテンアゲ曲。「2022年1-2月に出会った曲たち」参照。

ロマンス

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サムネ画像の羊かわいい。

珍しくApple musicで羊文学を人気順に流していたら、聞き覚えないけどキャッチーで良い曲だなと思ってタイトルを見たらこの曲だった、というのがこの曲の出会い。それでこの曲が収録された「きらめき」を借りることにした。

xxmusik9294xx.hatenablog.com

この曲と「ミルク」が収録された「きらめき」の素敵なレビュー記事を見つけたので紹介します。

紹介した曲の収録アルバムまとめ

アルバムリリース順に曲を並び替えてまとめた。好きになってから初めて発売したアルバムだからという要素も大いにあるけど、最新アルバムが一番思い入れある曲が多いなあと実感した。

分類 曲名 収録アルバム リリース年
夜ゆる ハイウェイ オレンジチョコレート
ハウスへの道のり
2018
リフレイン 天国 若者たちへ 2018
かっこいい 絵日記 若者たちへ 2018
ポップ ロマンス きらめき 2019
じーん ミルク きらめき 2019
リフレイン 人間だった ざわめき 2020
夜ゆる 夕凪 ざわめき 2020
じーん 恋なんて ざわめき 2020
リフレイン 変身 POWERS 2020
リフレイン Girls POWERS 2020
夜ゆる 1999 POWERS 2020
ポップ あの街に風吹けば you love 2021
昼ゆる なつのせいです you love 2021
じーん 夜を越えて you love 2021
ポップ パーティはすぐそこ our hope 2022
かっこいい 電波の街 our hope 2022
昼ゆる 金色 our hope 2022
昼ゆる ラッキー our hope 2022
じーん キャロル our hope 2022
寄り添い マヨイガ our hope 2022
寄り添い 光るとき our hope 2022

終わりに

公式に公開されてる曲についてはMVとかライブショートを貼ったけど、これだけ豊富に動画があるって魅力的だね!これだけコンスタントに名曲をリリースしている羊文学、今年中にもう一回EPが出るんじゃないかとワクワクする。今後の活躍が楽しみだー!