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杓子を逃げしものや何

ドイツ出張記 その3:3-6日目 初めての週末と新しい日常

はじめに

ドイツ出張記その3です。その2はこちらからどうぞ。

yominabe.hateblo.jp

2月10日 金曜日 (10. Februar, Freitag.)

5時前(日本時間の13時前)に目覚めて活動を始める。備え付けのオーブンレンジの皿がガラス製なのだが、グリル機能でパンを焼く時にガラス皿が溶けやしないかと心配だったので、意を決して取説を調べてみた。複数の言語のバージョンが出てきたが、英語はなく、結局ドイツ語の取説を悪戦苦闘しながら文字読み取りと翻訳サイトを駆使して解読する。結局、グリル機能では皿を使わないでくださいみたいな記述は見つからず途方に暮れる。

この日はようやくAさんと再会できる日、そして研究グループのメンバーと顔を合わせる日だ。前日に買った1週間券で意気揚々とトラムに乗り大学に向かう。Aさんからは9時から9時半の間に来てくれれば僕は居ると思う、と伝えてもらっていたので、そのくらいの時間に着くように宿を出る。電停を降りてまだAさんはたどり着いていなかったので、とりあえず同じトラムから降りた人々の多くが向かうスーパーの方に向かって歩いてみた。Aさんは逆方向から来た。笑


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研究グループのメンバーとの初対面。早速挨拶する。Aさんとのzoomで度々見て気になっていた、背景に映る向かいの建物のレンガの壁を見てテンションが上がる。ドイツの建物は赤茶色の煉瓦の壁の建物が多くてとても素敵だ。日本にもこういう色の煉瓦の壁を持つ家ができてほしい。ヨーロッパ風を主張するマンションとかでも、だいたいベージュ色の壁で物足りない気分になる。

この研究グループには、ドイツ人だけでなく、中国からのポスドク研究員やインドからの学生もいて、AさんもEU圏の別の国の出身であり、他国出身者が珍しくない環境であるため、遠い日本からやってきた私もそこまで珍しがられなかったように感じた。研究グループのDiscordサーバーに招待してもらってみんなが挨拶してくれて、中でも中国人のポスドク研究員の方がKon ni chi waと書いてくれたのが嬉しかった!昼食は研究室のメンバー何人かとともに食堂で取った。Aさんいわく、悪くないがスーパーでサラダを買うなどの選択肢もあるとのこと。おおまかに3つのプレートがあってそこから選ぶことが出来るようになっている。この表示も例のごとくドイツ語なので勘で選ぶしかない。そう考えるとうちの大学は各カウンターに写真と英語つきでメニューが書かれていて親切だったのだなあ。


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この日私はAさんについていき、魚にホワイトソースがかかってじゃがいもが付け合わせられた料理を食べた。じゃがいもがゴロゴロしてていかにもドイツらしいな、と思っていたけど、研究室に戻りどんなものを食べたのかいとシステム管理の方に訊かれたので、画像を見せると、それはベシャメルソースと言ってフランスでよく食べられるもので、ドイツ料理としてはあまり一般的でない、と教えてもらい、私の解像度の低さを思い知った。笑

この日、研究室では主に発表準備を行った。いつもと異なる環境での作業にテンションが上がり、それなりに捗ったが、アパートにコンセントの変換器を置いてきたので、程なくしてバッテリーを使い切った。現地で買うほどではないものの、コンセントの変換器は複数ある方が便利だという教訓を得た。


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コーヒーカップを洗いにキッチンに行ったら、汚れた食器を放置しないで!!という張り紙があって、国が変わっても大して人は変わらないのだなあと思った。笑

研究室を出てAさんの自宅にお邪魔する。ご家族にも久々の再会を果たす。外見がおしゃれで、中は広くてめちゃめちゃ素敵なお部屋。自分もいつかこんな部屋を借りてみたいなあと思う。


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私が無事博士学位論文の審査を終えたお祝いということで、自家製ハンバーガーで祝ってくれた。この時におすすめのマスタード(写真右上)を聞くなどして私も手に入れた。時差ボケが残っており、夕飯の頃にはめちゃめちゃ眠かった。Aさんのお子さんは良い子だし一緒に過ごす時間が楽しいのは間違いないのだが、子どもたちのペースに付き合ってあげるとかなり疲れるな…と思った。こりゃあAさんも大変なはずだ。翌日も起きたらおいでよ、と言ってくれてその日は帰路につく。

2月11日 土曜日 (11. Februar, Samstag.)


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初めての土曜日。相変わらず超早起きしたので、川沿いをランニングしてみる。滞在4日目にしてようやくゴミ捨て場の場所を理解する。連日Aさん宅にお邪魔する。ロケーションを記録していなかったので、前日の記憶を頼りに勘で向かう。無事到着。お昼ごはんにホットドックとクリスピーピザをごちそうしてもらう。

その後Aさんが自宅でメガネを失くしたので新しいものを買いに行かないといけないというので、近くのモールに自転車で行くのについていった。ドイツは自転車レーンが日本より厳格に決まっていて、特に標識がなければ道路の右側を走らなければならないことを伝えられた(後日、左側を走っていたおかげで警察に罰金を取られている人を見かけた)。

本屋さんの漫画コーナーは日本発の漫画が並んでいて壮観だった。スーパーがめちゃめちゃ大きくて楽しい。戻ってからはAさんの家にあるキーボードを触ってみたり、Aさん家族と一緒にスマブラをしたりテトリスをしたりして楽しい時間を過ごした。

2月12日 日曜日 (12. Februar, Sonntag.)

ドイツでは日曜日が休日であることが徹底されているらしい。病院や消防、鉄道などのエッセンシャルワーカーを除いては業務を課してはいけないことが、ドイツでは法律で定められている。特に不便を感じやすいのはスーパーだ。ふらっと何かを買いに行くことはできない。弁当が売っているコンビニのたぐいもない。カフェとかも昼間の3時間だけ営業とか、極端に営業時間が短くなっていることがままある。そういうわけで、土曜日の夜にはスーパーが混雑する。という話をAさんから聞いていたので、私は前日までに今日の食材を一通り揃えていた。抜かりないぜ。

昼ごはんにグラーシュを作ってみる。ドイツでの初めてのちゃんとした自炊。しかしそれ以外は16時までほとんど無為に過ごす。Aさんと、先輩と紹介してもらったNさんのご家族とディナーを食べる。典型的なブレーメン料理が楽しめるレストランということだった。どれも美味しかったが料理が多く、持ち帰らせてもらい、翌日のディナーも確保。

2月13日 月曜日 (13. Februar, Montag.)

朝初めてアパートメントの事務員さんに出会う。なにか不自由はないか?と聞かれ、先日から疑問に思っていたガラス皿について聞いてみた。使って大丈夫だよと言われ安堵。洗濯機の使い方も教えてもらい、ようやくこの部屋で疑問もなくちゃんと生活できるようになった。笑

ドイツの道端を歩いていると印象に残る日本との文化の違いがいくつかある。1つ目はたばこだ。屋外では割とどこでも色んな人がスパスパ吸っている。屋内禁煙のルールは存在するので、受動喫煙に気を遣ってはいるんだろうと思うのだけれど、屋外はセーフみたいな感じなのだろうか。

2つ目はゴミ箱。こればっかりは日本が1995年に地下鉄サリン事件を経験しているからテロに敏感になっていてしょうがないと思うけれど、ドイツにはバス停とかわりと色んなところにゴミ箱があって捨てるのが便利。

3つ目はマスク。欧米の人たちはマスクで顔を覆うことに抵抗があることは知っていたが、3両で数十人が乗車したトラムにマスクをしている人は数人といったところだ。まあ数人いるだけマスクをする心理的ハードルは下がるというものだ。

4つ目は鉄道のチケット。ドイツの公共交通機関には改札という概念がない。代わりに機関の職員が無作為に見回りをしていて、職員に遭遇した時に運悪くチケットを持っていなかったら80ユーロ(約11,000円)の罰金を課されるという仕組み。片道乗車券が2.85ユーロなので、28回乗って遭遇しなかったらトントンだな、なんてちょっと宝くじ気分で無賃乗車することもできる。まあしてないけど。笑 切符は時間内なら市内ほぼ全域乗り放題、という仕組みなので、乗りすぎたとか乗り間違えたとか、振替輸送が必要だとか言うことに気をもまれる必要がないのはありがたい。まあしばしば遅れたり運休していたりすることとトレードオフなのかも。

昼間はAさん抜きで研究グループのメンバーと食堂に行った(この後Aさんが食堂に同行することはほとんどなかった)。ドクターの学生のSくんが呼びかけてくれる。中国人留学生のYさんが、向こう1週間のメニューは大学食堂のホームページで見られるよ、と教えてくれた。この研究グループのメンバーは優しい人ばかりだ。

こちらの研究室は17時を過ぎるとひとり残っているかどうかくらいになる。私はだいたいAさんが帰るタイミングで一緒に研究室を出る。そんなに早い時間に帰路に着くことは日本での研究生活でほとんどなかった(そういう時は何かそわそわしていた)ので、ウキウキでトラムに乗った。私が持っているウィークリーパスは市内の広い範囲に行くことが出来るので、私はいつも乗っている6番線の終点まで乗ってみようと思い至った。終点は空港である。

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フランクフルトのような国際ハブ空港ではないながら、国内の他の都市だけでなく、隣国への国際線もある。ロンドンへ飛ぶ飛行機もあった。ここで1~2万円出せばロンドンに行けてしまうのか、と私はソワソワしていた。結果的にダイヤを見たら1泊しても滞在時間はかなり短くなってしまうことが判明したので、実行には移さなかったが。空港って色んなところから人がやってきてまた旅立っていく場所であり、自分もまたどこか遠くに行けそうな気がする素敵な場所だなと思った。