読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

ドイツ出張記 その6:12-13日目 週末オランダ旅行・アムステルダム編

はじめに

ドイツ出張記、今回はオランダにあるミッフィーのホームタウン・ユトレヒトから、首都・アムステルダムに移ります。

2/19 出発

アムステルダムに向かう朝。眠りが浅かったためか、早めに目覚めることができて、小雨の降る中無事ブルーナさんの像を見届けた。そのままユトレヒト中央駅に向かう。ユトレヒト中央駅からアムステルダム中央駅までは1時間おきに列車が出ていたので分かりやすかった。プラットホームで待っているとまたお金をくれと声をかけられるだろう、と、ホームに降りる手前の吹き抜けで座って待っていた。すると前日に遭遇した女性にみたび遭遇した!!今度はためらいなく「すいません、アムステルダムに向かうんですか?」と声をかけたら向こうも私のことを覚えてくれていて、アムステルダムに同行することになった!

列車に乗り込み話を聞くと、彼女はTさんという。都内のとある大学の文系学部に在学していて、卒業間近なので旅行に来ていると教えてくれた。年下であることが判明。コロナ禍の困難な状況でなんとかヨーロッパで留学した経験があり、今回の旅でもその留学した街に訪れる予定であるとのことだった。Tさんも私のことをもう一度見かけたら声をかけようと思ってくれていたそうだ。アムステルダムは様々な美術館があり、基本的には予約していないと入れないので、あらかじめ予約している時間にはそれぞれ美術館に訪れるとして、お互い予定が決まっていない時間は一緒に街をめぐろうよ、と言う話になった。

午前中

まずは中央駅を降りて一日券を買う。首都の中央駅はやはり大きい!日本の主要駅は無機質な駅舎が多く、こんな立派でおしゃれな駅はないな、原宿駅もせっかく古くからの駅舎が残っていたのに壊されてしまったしな…としばし考えて、東京駅の存在に思い至った。あの駅舎はヨーロッパの中央駅に負けず劣らず立派でおしゃれだと思う。帰ったら行ってみよう。

留学経験があるだけあって、Tさんの英語はめちゃめちゃ発音がきれいですらすら喋っていた。Tさんは午前中中央美術館の予約をしていて、私はフリーだったので、ダメ元で中央美術館の当日券を買えないかと、Tさんに着いていき中央美術館に向かった。案の定門前払いを受けた。ここで一度Tさんとは解散して、前日に夕飯を見つけるのに苦労した反省から予約したランチのお店で落ち合うことにした。1人席を予約していたが、一蘭システムでもない限り2人で入ることはできるだろうと踏んでいた。

帰国してから、小説家の原田マハさんのツイートで、ものすごく貴重なフェルメール展が開催されていたことを知った。下調べをしないとこういう機会を逃すのである🙄🙄…まあその時間で別の場所を廻り楽しむことができたのだから、良しとしよう。

同じ時期に日本からやってきた人が同じ街を歩いていたことを知るのってなんか良いよね。アムステルダムとか首都レベルになると、日本から訪れたと見受けられる人にすれ違う機会も多かったけど。

中央美術館に入れなかったので、このひとり時間に、午後に予約したゴッホ美術館(中央美術館から歩いて数分のところにあった)に入れないか画策してみるか、と、ゴッホ美術館に向かい、入り口の係員さんに尋ねてみた。流石に早すぎて入れなかった。しかたがないので、一度中央美術館とゴッホ美術館のある公園からは離脱し、街を散策して面白そうなものがないか探してみることにした。

運河沿いを歩いていると花市場を見つけた。持ち帰りたかったけど、日本での検疫をクリアする球根しか持ち帰れないので、面倒に思いやめておいた。

その後も散歩を続けていると、運河沿いに運河クルーズツアーの看板を見つけた。やはり水の都は水上から攻めるのがいいな、と思い,Tさんにゴッホ美術館から再合流した後誘ってみようと思い至った。さらに歩みを進めると、広場の真ん前に立派な建物が立っており、人々が次々とその建物に入っていくことに気づいた。入口を見るとPalaceと書いてある。王宮だ!10分後の予約ですんなり入れるようだったので、即決で入ることにした。しかし昼食の予約を考えるとフルコースをのんびり見ているほどの時間はなかったので、音声ガイドで選択できるダイジェストコース+αくらいで観ることにした。



王宮は、絵画や彫刻など作品のカテゴリで展示場所が分かれている美術館や博物館と異なり、絵画や石材や彫刻や調度品を全て同じ部屋で見られることが魅力的だ(もちろん、それぞれテーマを意識して体系的に観ることのできる美術館や博物館も好きである)。とにかく贅沢を尽くして立派な建物を作り上げている空間に身を投じて、ここは王様の部屋、ここはゲストの宿泊部屋、ここは会議室、なんて話を聴くのが楽しい。しかも今でも重要な式典では実際に使われるらしい。総理大臣とかになったらここに泊まることができるんだろうか…あの超高級な枕によだれを垂らしちゃったらどうしよう…などとなんとも庶民的なことを考えていたのだった。そんな事を気にする人はこんな場所には泊まれない。笑

ランチ

時間を気にしながら展示を楽しみ、予約したランチのお店になんとか時間通りに着いた。案の定1人増えてもいいとのことだった。店員さんは私が日本から来たことを知ると、日本語でこんにちはと挨拶してくれた。Tさんから遅れるとの連絡が入った。どうやら出口のミュージアムショップが混んでいるらしい。まあ旅先というのは何度も来られないので、機会損失するくらいなら多少の融通を効かせたほうが良い。メニューの写真を送ってあらかじめ注文しておくことにした。

Tさんはあまりお酒が飲めないとのことだったが、私はアムステルダムでビールを飲める貴重な機会だと思い、一人で飲んでご機嫌になりはじめた。Tさんは私に、ミッフィーが中央美術館の作品を眺めているポストカードをプレゼントしてくれたので、私も散策してふらっと入った雑貨店で気に入って買った何枚かのポストカードの中から1枚あげた。(私だけ)お酒が入って話が弾んだ。お互いのサークルの話。東京以外に住んだ場所の話。シカゴとかシンガポールとか言われてめちゃめちゃびっくりした(どおりで英語が流暢なわけだ)。しかし、あちこちに運河の流れるアムステルダムは、三角州の上にあり川がところどころに流れる広島の街並みと似ている、という話をしたらあまりピンときていないようだった。日本にも素敵な街がたくさんあるので訪れてほしいな、と思った。それから、一人旅だとネタバレを忌避して&あまりテンションが上がらなくて、あまり計画を立てないで行動してしまうけど、人と旅する時はしおりを作るほどよく調べると話したら、いたく共感してくれた。前の日の夕食でポテトを回避した(詳細は前記事参照)ことを話して、ヨーロッパでは付け合せのじゃがいもが邪険に扱われがちだよね、という話で盛り上がった。笑

このお店で食べたのはStamppotという、マッシュポテトに焼いたお肉を載せたみたいなプレートだった。結局その後私も美術館の予約時間が来て満腹にも近かったので、私もポテトを残し、邪険に扱ってしまった。。。Tさんは難なく完食していてすごいなと思ったけど、たぶんビール2杯分の違いだな。笑

ゴッホ美術館

へべれけの状態でゴッホ美術館に向かった。一人になって冷静になりながら鑑賞しているうちに、一人だけ酒を飲み酔っ払ってご機嫌になったことを反省。旅先で出会う同胞というのはそのシチュエーションのお陰で好感度にボーナスポイントがつくものだが、Tさんに映った私は、メッキがぼろぼろと剥がれてしまってボーナスポイントを消費しただろうな、年上って言ったし敬語のままだったから遠慮させちゃったかなとじわじわと後悔。まあクルーズツアー代を払って貰う代わりにそれより多額の昼食を払ったし…と心のなかで免罪符を探していた。

その一方で、酔っ払ったお陰で人の目を気にせず色んな角度からゴッホの絵を見ることができた。ゴッホ美術館には、ゴッホが影響を受けたり与えたりした画家の作品や、同時代の画家の作品も飾られていたが、ゴッホの作品は他人のものと比較にならないくらい、絵の具をたっぷりと厚塗りしていて見ごたえがあった。斜めから張り付くように絵を見ていて、ふと周りを見たらちょっと笑われていた。その人達の視線を遮ることはしていなかったはずなので、人目を気にして遠慮して原画をじっくり見る機会を逃さずに済んだことは、結果オーライだなと思った。笑

ゴッホ美術館で驚いたのは、来週で誕生日を迎えた後の私の年齢で画家になることを志したこと、その10年後に亡くなってしまったこと、それにもかかわらず一つの美術館が建つほどの沢山の作品を描き、世界中に名を知られる画家になったことだ。亡くなる2年前くらいには精神を患い、病院で制作を続けていたとのことだが、そのころの作品を見ると、あれだけ普段厚塗りで絵の具を塗りたくっている絵にキャンバスの地が見えて、ああ平常運転時の彼には許容し難いであろうクオリティのものでもひとまずは完成させていたのだなと思い至った。私の座右の銘の一つにしている言葉でもあるが、Done is better than perfect. とは至言だなと思った。ゴッホでもたまには不完全な作品を制作して美術館にも飾られているのだから、完璧を追い求めてなかなか仕事を進めないのはいけない。まあ粗製乱造でも駄目なのだけど。

夕景

ゴッホ美術館を出て中央駅に戻りTさんと再び合流し、運河ツアーをする。先程より私はタメ口で話すことができ、相手も少しタメ口混じりになった気がする。

ツアーのガイド音声が案内する話は、ただ歩いただけではわからないものもたくさんあって楽しかった。特にオランダの建物は雨で汚れないように壁を前のめりに作ってあって、そのために荷物を上階から降ろしても荷物がぶつからないという話とか。

日が暮れて街がだんだん暗くなるまでの時間帯に乗ったので、昼の街も夕方の街も楽しめて、いい時間帯に乗れたものだと思った。運河ツアーを終えてから私のバスの時間まで数十分あったので、街を散策した。昼間に歩いた街の景色がまた違ってきれいに感じた。

別れ際にTさんと記念写真を撮って、また日本で会おうと約束して解散。旅先で出会った人というのは基本的に二度と会えないものなので、また合う意思がお互いにあることを確認できたのは嬉しかった。この滞在中で最も楽しい時間を過ごせた気がする。やはり旅というものは、特に海外の旅は人とするのがいいなと思った。見慣れない街で感じたことを、同じ日本から訪れた人と日本語で共有できることの安心感はとても大きい。そして人を楽しませようと思ったほうが調べ物もたくさんして、結果的に自分も楽しめる。

フリックスバスで5時間ほどかけて、24時過ぎにブレーメンに戻った。乗り換えもなかったので、遅れや接続の失敗を気にする必要もなく安心して戻ってこられた。音楽隊像をなでて宿に戻った。

2/20

Tさんと別れた後、ハンブルクに行くと話していたのでカリーヴルストをおすすめするなどのやりとりを何往復かした。ここでまた送りながら後悔する。私と違って彼女は完全に一人旅しているわけだから一人耐性があるはずで、そんな人からしたら同行しているわけでもない人間からの旅先でのLINEなんて鬱陶しい以外の何物でもないだろう。こうやって完全に打ち解けたわけではない相手と、1日何件か数時間おきにだらだらとLINEでやりとりして、あーそろそろ鬱陶しく思っているだろうなーと思いつつダラダラと会話を続けてしまい後悔する、みたいなムーブを、私は年に2~3回してしまう。今回もそのパターンに突入してしまった、と、返事が返ってきてテンションを上げる、話を引き延ばしてしまったことに思い至りテンションが下がる、の反復横跳びがスタートしたが、今回はいつもより理性的にすぐに話を切り上げられ、悪い印象はそんなに残さなかった気がする。安堵。

そんな事を考えながら日常に戻っていた。いつも乗るトラムが10の倍数分に最寄りの電停を出発することを知っていて、それに合わせて行動する自分に思い至り、すっかりブレーメンもホームタウンになったなと思った。まあいざそのトラムに乗ってみたら、先週の金曜と同じく大学直通ではなかったので、ぎこちなく乗車していたのだが。笑

研究室でAさんに会い、週末旅行の顛末を話しながらこれからの行動予定を話した。ここまでほとんど発表準備しかしていないことへの危機感を伝えた。明後日からの(ブレーメンを離れる)出張での発表準備はすでに済ませていて、手持ち無沙汰だったので、内々定を頂いた引越し先の物件探しをした。

帰りがけにまた違うトラムに乗って遠回りして、市内にある他の鉄道駅前で降りた。

スーパーで初めて缶とペットボトルのリサイクル返金システムを使った。