読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

2022年1-2月に出会った曲たち その1:Official髭男dism編

はじめに

ほとんど毎年、1回は様々なアーティストの曲を初めて聴いていっぺんにヘビロテする時期が訪れる。2016年はクリープハイプ星野源(ちょっと時期が前後してた)、2019年は赤い公園スピッツサカナクションと、椎名林檎のトリビュートアルバム、2020年は赤い公園の新作アルバムと髭男が1回、米津玄師と藤井風とサンボマスターが1回、2021年はアニメ主題歌詰め合わせセット(長期で入れ替わり立ち替わり聴いてた)。そして今年はそのシーズンが早速訪れている。今回の主役は髭男と羊文学と赤い公園never young beachと五等分の花嫁とかげきしょうじょ!!である。ひとつの記事で書ききろうと思ったが、こないだひとつの記事のボリュームが重たいので心して読まないといけない、と指摘をいただいたことを思い出したので、アーティストやタイアップ作品ごとに好きな曲をレビューしていく。全5回。今回は髭男編である。

第2次髭男ブーム

2020年3~5月以来の第1次髭男ブーム到来。今回のブームの火付け役は第1次で好きになったノーダウト、バッドフォーミー、ブラザーズ、SWEET TWEETと、2021年に「赤い公園津野米咲のKOIKIなPOP・ROCKパラダイス」(通称ゆうパラ)で聴いて好きになったコーヒーとシロップである。年初の2週目から、映画コンフィデンスマンJPプリンセス編のプロモーションが活発になり、Anarchyの評判が良かったのを聴いて、まず久々にこれらの曲を聴きたい気分になり、1週間後には昨年8月にリリースされていたフルアルバム「Editorial」をレンタルし、AnarchyはDL購入した。特に好きな曲は以下の4曲である。

Cry Baby

昨年5月のリリース時から、転調に次ぐ転調でありながら評価が高いという噂は聞いていたが、当時新しい曲を取り入れる気分ではなかったので、新年を迎え満を持して聴き始めた。評判通りというか、この曲に関してはもはや自分が言いたいことはだいたい言われちゃってるくらい、自分より音楽に詳しい様々な人が言及している。

www.kansou-blog.jp

最初にこの曲の評判を目にした記事。アルバム10枚分のカロリーは言いすぎだけど(笑)、コードの弾き間違いからサビの転調思いつくのがノーベル賞科学者と一緒ってくだりわかる。

rollingstonejapan.com

とても丁寧に各パートで何をやっているかを解説してくれている。

datt-music.com

どこで転調するかを分かりやすくまとめてくれている。

しかしあえてここで自分の言葉で語るとすれば、「高い緊張感と密度で通り抜ける4分間」だ。行進曲調のイントロで既に背筋を伸ばされる。そして藤原さんのいつもより太めな声。Aメロのどすの利いたベース、薬莢を充填したような効果音、Bメロの最初のギターの「じゃらー」などなど、合間にインサートされる様々な効果音や楽器の音が緊迫感を演出してリスナーのテンションを高める。ドラムもタイトで骨太にチューニングされててかっこいい。

冒頭でも触れた転調もやはり癖になるというかツボを押されている気がする。転調がある曲って、下手すると、違う曲を切り貼りしたよねこれ??なんか情緒不安定だな~みたいな気分にさせられてモヤる。でもこの曲では転調したことがわかる造りなのに連続性というかぐんにゃりと曲がりつつ連続性は保たれている感じがするのだ。その最たるところがサビ真ん中の「不安定な」での転調だろう。一瞬時の流れが遅くなったか…?という感覚に襲われるけど、また戻る。そんなこんなで、ジェットコースターに載せられてよくわからないままあちこち振り回されたと思ったらもとのところに戻ってきた、みたいな体験を味わえる。アウトロが爽快なのが、ゴッドファーザーみたいな重厚長編映画を観た後に晴れた空が広がる屋外に降り立った時に似たような開放感をうまく演出していると思う。でもやっぱり、これだけ振り回されてももう一回聴きたくなるのは、サビのメロディの気持ちよさによるところが大きいと思う。そんなてんこ盛りの贅沢な曲なので、この曲5分くらいかな~と思って見てみたらたったの4分1秒だった。濃厚な髭男体験をお試しあれ。

最後に、この曲はこうして楽曲単体でも楽しめるが、TVアニメ「東京リベンジャーズ」*1の主題歌としてリリースされていることも踏まえると、より深く楽しめるのだろう。私はまだ東京リベンジャーズを観ていないので、現時点でこの視点からの言及はできないが、近いうちに観てみたい。

Universe

髭男好きの飲み友達に、第二次ブームが訪れてEditorialを聴き出したことを話したところ、勧めてもらった曲。ヘビロテポイントはわくわくするイントロのピアノだとのことだったので、イントロに注目して聴き始めたらすっと最後まで聴き終えてしまった。こちらは爽やかな藤原さんと、突き抜けた高音でシャウトする藤原さんを安心して楽しめる。Aメロのパラパラパラパパー!って鳴らしてるブラスが気持ちいい。やっぱり髭男の魅力は楽器隊の作り出すリズム感である。「未来はこうとか理想はこうとか 心に土足で来た侵略者は」ってちょっとドキッとするね、自分も人の心に土足で踏み込んでいなかろうかと。

Anarchy

髭男聴き直そうと思ったきっかけの、映画コンフィデンスマンJPの主題歌。脚本の古沢さんがべた褒めしていた。

ノーダウト、Pretender、Laughter、Anarchyとこのドラマの主題歌として書き下ろされた曲は贅沢すぎる。そして逆に髭男もこのドラマに起用された曲が知名度を上げるターニングポイントになっている。ドラマの方は観るなら映画からではなくテレビドラマ版から見たいと思ってはや数年。「何の価値もない夜更け」でアカペラになってちょっとしゃがれるところが良き。夜に溶けていきそうなアウトロも好き。

犬かキャットかで死ぬまで喧嘩しよう!

本稿で紹介する曲で唯一2017年リリースの3rdミニアルバム「レポート」収録された、少し古めの曲。初めて聴いた時は1回聴いただけでPCの音楽ライブラリにしまったままにしてしまったが、このタイミングで聴き直して好きになった。なんと言っても聴きどころは赤い公園がコーラスを務めていることである。このブログでも何度も紹介しているように、赤い公園は私の最も好きなアーティストだが、髭男は昔から赤い公園とのつながりが深い。かつてはゆうパラに準レギュラーと言われるほどたくさん出ていたそうだ。そして私自身、Pretenderだけは耳にしたことがあった髭男を好きになり、第1次髭男ブームが訪れたきっかけは、ゆうパラで津野さんがかけてくれた「バッドフォーミー」である。それ以降も穏やかな曲特集(たしか)の回で流してくれた「ブラザーズ」とか、最終回に過去津野さんがかけてくれた曲としてリクエストされた「コーヒーとシロップ」とか、自分で一度聴いただけでは通り過ぎてしまったのに、津野さんがこれ良いよって紹介してくれたら好きになるという曲が何曲もあった。他にも赤い公園の初代体制でのラストライブ・熱唱祭りではサポートメンバーとして、レコーディングにも参加していたBEARの演奏をしていた。

さて、この曲に赤い公園がコーラスで参加していることも少し前に知っていたが、どこがそのコーラス部分かちゃんと確かめる気分にはなっていなかったので、この第2次ブームで改めて聴き直して、「ずっとこのままでいようよ」と歌っている彼女らのコーラスで大変幸せな気分になった。こんな幸せそうなコーラスを歌わせてくれてありがとう藤原さん。寝ても覚めても続くこの幸せ!結婚式の二次会とかでかけたいねえ。結婚ソングではクリープハイプの「さっきはごめんね、ありがとう」に次いで好きな曲になった。

その他のEditorial収録曲

再生回数はそんなに重ねていないけれど、Editorialは「みどりの雨避け」「ペンディング・マシーン」「Bedroom Talk」も割と好き。

「みどりの雨避け」は休みの日にアンティーク家具屋さんに連れて行ってくれそう。雨が降っててもいいな。ストリングスが優しくていい。一旦アウトロっぽい展開を挟んでまた歌い始めたからまだ続くのかな、と思ったらふっと終わっちゃうのも良い。第一次ブームではビートが軽やかで盛り上がる曲を中心に好きになったが、穏やかな曲の魅力もこのアルバムで知り始めた。

ペンディング・マシーン」はイントロまでのシンセサイザー主体で中くらいの箱のコンサート会場にいたと思っていたら、ビート主体になってクラブのホールに連れて行かれる感じが良い。早口すぎないけど口数の多いボーカルが心地良い。サビでコーラスっぽい歌声になるところも好き。

「Bedroom Talk」は題名の通りまどろみながら聴くと心地よさそうなギターのエフェクトが良き良き。ジェラピケ着てギター弾いてほしい。自分でやればいいんだけどね、ジェラピケもギターの腕前もないんだよ…(´・ω・`)

おわりに

結局髭男だけで3500字超えちゃった(笑)次回は羊文学!

*1:原作は卍入りだけど、アニメのタイトルとしては除かれているようだ。