読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

牝鶏nの微睡#1 無性にチョコが食べたいときは

ナッツや豆類、果物なんかを口にしてマグネシウムを摂るのがいいらしい。

最近めっぽう肌寒くなってきて画面に向かう時間が増えた。それならと、本来ならTwitterにでも書き散らすべき便所の落書きをこうしてのらりくらり綴ろうかと思う。

僕はこの世の様々のうち塵のようなほんの少しのものしか見ること・知ることが出来ず、異論はいくらでも認めようと思うが、それでもなお余りにニンゲンが好きすぎるが故に、また人は本来その圧倒的大多数が実は素朴な寂しがりの善人であるのではないかと思うが故に、これを書こうとした次第である。

僕はシスヘテロ(自らの性自認と身体的性が一致していることをシス、いわゆる異性愛者のことをヘテロという)の「女性」で、あっでもヘテロはどうだろう、もしかするとバイかもしれない、そこはまだよくわからない、物心ついた時からセックスカルチャーと恋愛にとてもとても興味がある。

中学の頃から団鬼六の『美少年』に触れ、ネット黎明期には数々のフィッシング詐欺に遭いそうになりながらすごくたくさんのAVを見てきたし、初恋の先輩を追っかけて二浪して入った旧帝大では当初の希望は叶わなかったが、潤沢な知性と好奇心、類稀な男女比のフィールドで考えうる限りのありとあらゆるアソビをした。FANZAが独立したときにはこれ研究テーマにして修士行けんかな、とか考えたりもした。

僕が書くことはどんな種類の犯罪も肯定する意図ではなく、被害を揶揄するものではない。犯罪はなくなってほしいし、被害者の心身の傷が一刻も早く癒え、加害者が(本当は生皮を剥がれて塩を塗られたらいいと思うけど)二度と同じことを繰り返さず、自らの罪を本当に理解し一生悔い、自律することを願っている。

僕の意図は、自分の興味の範囲を皆に開示し、ちょっとした考えの持ち方や見方を増やすことで、少しでも皆が平穏で生きやすい心の状態を維持する助けを作ることにある。

もっと言えば、孤独に寄り添いたい。

個人的に画面の向こうの誰かの孤独に寄り添うことは難しいけれど、それでも、誰かの死にたい夜や消えたい一日、自分は無価値だと思う瞬間を少しでも減らしたい。どうせ死ぬまで生かされるんだから、あんまり苦しまないように頭を低くして過ごす時があってもいい。

こういうわけで、本当に申し訳ないんだけど論証の厳密さはさておいて僕がただ上記の目的を第一にキーボードを叩いている、ということをふわっと理解してもらったら、ここから語りたいことを気ままに語ろうと思う。読んでくれるととても嬉しい。でもキツかったらすぐバックして。

それではまず初めに、FANZAから見る渇望について。

〇睨まレイプの不人気さ

「睨まレイプ」という作品がある。タイトルの通りレイプされる側がめっちゃ睨んでくる、抵抗もない、声も上げない異色の作品である。お気に入りや閲覧数、コメントを見る限り不人気である。

レイプ物はラストの展開が大きく分けて二種類あって、俗に言う快楽落ち、「壊れてしまう」ものと最後まですごい泣かれる(嫌がられる)ものがある。数えたわけではないが圧倒的に前者が多い。その点で考えると「睨まレイプ」は明確に後者である、ただ他の作品と大きく異なるところは純粋な「嫌だし迷惑」が抽出・表現されるところだ。

レイプというシチュエーション上、本来は「最初」嫌がってくれないとダメなわけだ。とすると人に嫌がることがしたいのか。もしそうなら睨まレイプはもっと人気があっていいはずだ。マジでずっと睨んでくるのですごい嫌がられてる感はある。じゃあ、見る側は実は人に嫌なことをしたいと考えている訳ではないのか。もし、人の嫌がることをしたい(または嫌がられても自らの欲求を通したい)のでなければ、人がレイプ物を通して見ているものは「レイプ」そのものではないことになる…?

ちなみに!レイプってジャンルは実は現在FANZAから消えている!これについてははっきりとした理由はわからない(一説にはクレカ決済の審査に引っかかるとか)が、「NTR」とかに含まれるようになっている。レイプが「いたずら」等と矮小化されずちゃんと問題として社会に認知されるようになったのは良かったと思う。少し話が逸れたが、「NTR」物に含まれる理由もちゃんとあって、今回僕が話したいことの一部を構成するはずなので少し待ってほしい。

〇「熟女」と「美少女」

ジャンルを見て新たに発見したことがある。見出しに書いた両者はどちらも恒常的に人気があるが、より作品数が多い(≒売れている)のはどちらのジャンルだろう。驚くなかれ、「熟女」が「美少女」の3倍近くの作品数を誇る。「熟女」初心者からすると、『サザエさん』に出てくるフネさんみたいなのを想像する人もいるだろうが(とはいえフネさんは未だ40代だ)、今の『熟女』枠には「キレイなお姉さん」を含む。従来、日本人には童顔でナイスバディ(顔はクラリス、体は不二子ちゃん)が好まれる傾向があった。しかし、上記ジャンルを覗くと、さすがに顔も不二子ちゃんとまでは行かないまでも大人っぽい(幼児的な顔の要素を多分に含んでいるわけではない)顔立ちの女優さんが多い。どういうことなのか。

〇プレイボーイの表紙には

世界的に有名なそういう雑誌のプレイボーイのカバーガールは景気と関係があるといわれている。景気が良い時は華奢で小柄なかわいい守ってあげたい系の女の子が表紙を飾る。逆に景気が悪い時は大柄な、肉付きの良い包容力のありそうな女性がトップに来る。なぜなのか。これは主要な購買層である男性が女性に求めるものが経済状況により変化するからだと言われている。そう少なくない層の「外見の好み」は景気によって変わるということだ(他にも人の好みを変える要素は沢山ある。マスメディアの影響だったり、偶然仲良くなった友人の影響だったり、書籍や映像などに触れることでも変わることがあるだろう)。

翻って現在、日本経済は大変苦しい状態にある。長く続く不景気、未曽有の円安の中で物価だけは高騰し、性別や年齢に関わらず厳しく生きづらい日々が続いている。

このことと、「熟女」人気は関係があるんじゃないか。上述のプレイボーイと同じことが起こっているのだとしたら、大多数の男性が「支配の対象」や「王子様・ヒーローになる快感」より「熟女」を通して「包容力」だったり「癒し」を求めているということになる。もしかして、これは完全な戯言なんだけど「レイプ」物に求められているのも何かそういう「無理を受け入れてくれること」なのかなぁ。だから全然「受け入れてくれない」睨まレイプは人気が出ない、という仮説が生まれる。その点でいえばモラルとしてNGとされる浮気の別視点である「NTR」は「世間的にはダメだがそのタブーを侵してまで自分を受け入れてもらう」ことに意味があるとも考えられる。

「嫌がることを受け入れてもらおうとする」ってすごい子どもっぽいムーブだが大人になっても人の欲求なんかそうそう変わらんということか。

何はともあれ景気が悪いんだから、性別とか社会的立場に関わらず多分一様に皆疲れている。景気といえば悪くなるとミニスカが流行り、良くなるとロングスカートが流行る(ミニスカの方が原価がかからず結果として単価が安くなり、収入が減った消費者にも購入してもらいやすくなる)みたいな話もあったが、最近は景気が悪くなりすぎてトップスまで短くなっているのか、はたまた今夏ばかりは無関係なのかヘソ出しが流行った(この原稿の校正時に実は最初に主張されたヘムライン指数では好景気=ミニスカということが示唆されたという指摘をもらった。不況だと新しいストッキングが買えず、古い絹を隠すためにスカートが長くなるのだとか…)。

話は逸れたが、僕は誰かと比べて誰かが疲れているとか、誰かは疲れていないとか言いたいのではない。僕がピントを合わせることが出来たのが偶然FANZAの作品ジャンルで、そこから見えたように感じる疲れや生きにくさの言語化を試みただけの極めて不完全なものである。他も何かピントが合ったものがあれば追い追い文字に起こしていきたい。

〇「こちらが性癖を覗いているとき、性癖もまたこちらを覗いているのだ」

で、何でくどくどとこういったことを書いたのかというと、漫然と「いいな」と思ったものを見るより、なぜそれをいいと思ったのかわかった方が今の状態を改善しやすいという自らの経験があるためである。漫然と今食べたいものを食べるより何かを食べたいという気分から自分に足りない栄養素を割り出すことが出来る時もある。

「自分は今誰かに頼りたいんだなあ」とかは意外とわからないもので、そういう気持ちを放っておくと身近な誰かに八つ当たりしてしまったり思ってもない態度を取ってしまったりする。そうしたら自分が感じている不快感と無関係な誰かを傷つけたり無用なトラブルを招いたりしてよくない。そういうことを避けるため、FANZAやPornhubを開けて自らの性癖を覗く時はその性癖が一体今の自分のどんな状態を反映しているのかに注意することも案外有用かもしれない。

回顧文献
『「美少女」の現代史―「萌え」とキャラクター』(2004年,ササキバラ ゴウ著,講談社