読み鍋屋

杓子を逃げしものや何

この5ヶ月間に読んだマンガのひとくちレビュー17本

はじめに

今年5月に引っ越した。前に住んでいた家は初めての一人暮らしだったので、一人で楽しめる様々な趣味を増やした。2019年に、午前十時の映画祭で往年の名作映画をたくさん観て、2020年のコロナ禍にようやくAmazon Primeを契約し、映画やアニメを色々と観るようになってからは、基本的にフィクション作品は映像で楽しんできた。しかし引っ越してからは環境が変化して疲れ気味だったり、休日にお出かけしやすい環境になって自宅を留守にする時間が長くなったりしたことで、映像作品をじっくり楽しむのが疲れると感じるようになってきた。昨年は流行りの作品を追いかけていたので、1週間新しい回を待つエネルギーを消費したというのもある。

そんな中、赤い公園繋がりのフォロワーさんと遊ぶために立川に遊ぶ機会が訪れた。立川は赤い公園のホームタウンであり、かつて市役所だった建物の前の公園に赤い公園のベンチが設置されている。そしてその建物の中には立川まんがぱーくという、公営(正確には立川市が民間に委託しているらしい)のマンガ喫茶がある。ネットカフェと違い明るく開放的で、老若男女が館内のあちこちでリラックスしてマンガを読んでいる素敵な空間だ。そこで読みたいマンガを何作品か読んでいるうちに、自分のペースでパラパラとめくることができ、消費時間に対して情報の濃度が高いマンガこそ今の自分のコンディションに合う媒体なのでは、と思い、マンガのサブスクを始めよう!と思い立った。

宅配レンタルや電子書籍読み放題、ネットカフェを色々と検討した結果、最もコスパが良かったのがTSUTAYAの店頭借り放題サービスだった。一度に5冊借りられて、返却すればその日のうちでも次の5冊を借りられる。人気作品が一通り揃っていて(電子書籍の読み放題サービスが手薄がち)、貸し出されていない限り、営業時間内なら続きをすぐに手に取ることができて(宅配だと返して借りるのに数日かかる)、家でのんびり読むことができて(時間制のネットカフェだとどうしてもせかせか読んでしまう)、本棚を見ながら気になった作品を手に取ることができて、月額1100円。私のベストアンサーはTSUTAYAだった。

そういうわけで6月中旬から5ヶ月、最初の何巻か読んでフェードアウトした作品を除けば、17もの作品を(旧作入りしている中での)最新巻または最終巻まで読破した。読み始めた日付順に、軽いあらすじ、読み始めたきっかけ、好きなところを書いていく。タイトル、作者、出版社、掲載誌*1、巻数*2の順に表記する。興味が出たらそのまま1話を読めるように、試し読みリンクを貼った(ページを遷移しなくともそのまま読めるという点で、講談社が一歩リードだね)。

物語の核心に触れる直接的なネタバレは回避しているが、作品のイメージを語る上でのネタバレは時折するので注意。

*1:途中で移籍している場合は最新の掲載誌

*2:「全○巻」と表記したものは完結済み、「既刊○巻」と表記したものは連載中

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「LIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく!」ネタバレあり感想

はじめに

8月13日、「LIVE STAGE ぼっち・ざ・ろっく!」の昼公演を鑑賞した。「ぼっち・ざ・ろっく!」は2022年に放映されたアニメの中で「リコリス・リコイル」と並ぶとも劣らないくらい好きな作品である。2.5次元の舞台が催されると聞いたときは、ふーんリコリコもこないだ2.5次元化してたし、最近は色んな作品が2.5次元化してるんやな~、くらいの興味しか持っていなかった。しかし、遊ぶ約束をしていた友達が急用で会えなくなり、さらに台風が接近。お盆を無為に過ごしてしまうかもしれない…!と思い、そういえばぼざろ舞台がちょうどお盆休みだったなあと思い出した。どうやら演奏できる人たちが演じるらしい。当日でもチケットが買えるとのことだったので、初めての2.5次元舞台に、ちょっとお値段は張るけど、目の前で芝居と音楽が両方楽しめるんだから払う価値はあるだろう、と思い立って、朝目覚めて昼公演のチケットを取った…ら、日付を間違えて次の日のチケットを取っちゃった!Σ( ̄□ ̄;)

たまたま次の日も予定がなかったからよかった。他の予定も考えた経路的には、翌日のほうが通り道だから結果オーライだと言い聞かせつつ、初めての2.5次元舞台に胸を高鳴らせながら、新宿駅東口を出て歌舞伎町タワーへと向かった。やっぱりお金を払っているだけあって(?)、スーツの社員さんがお出迎えしてくれるんだなあ。なんて思いながらまもなく始まるステージを待った。

そういうわけでここから下は、バンバンネタバレしながら初めての2.5次元舞台鑑賞の感想を綴っていく。

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好きなアニメ主題歌が4曲も令和4年アニソン大賞の受賞作品になった

はじめに

2022年(令和4年)は私にとって最もアニメの流行に乗る年だった。映画は「名探偵コナン」「五等分の花嫁」「ONE PIECE」「すずめの戸締まり」といった話題作を観に行ったし、テレビアニメも「その着せ替え人形は恋をする」「リコリス・リコイル」「ぼっち・ざ・ろっく!」にハマり、「平家物語」「SPY×FAMILY」「チェンソーマン」にも人並みにハマった。

そんな空前のミーハー年にたまたまそうだったのか、それとも元々毎年そうだったのかは判断できないが、これらの作品の主題歌や劇中歌には名曲がずらりと並んでいた気がする。J-POPで不動の地位を確立しているアーティストやロック界隈で名前が浸透し始めたバンドが全力で勝負を仕掛けてきた名曲もあれば、キャラクターや作品コンセプトに合う歌唱未経験アーティストが作品のコンセプトに合う曲を歌い上げた名曲もあった。

そう感じていた私の感覚はどうやら間違っていなかったようで、自分のパソコンの音楽ライブラリに追加してヘビロテしていた曲がなんと4曲も「令和4年アニソン大賞」で賞を受賞していた。同じ部門設定である令和2年と令和3年の受賞楽曲で私が好きになったのは、「Easy Breezy」(chelmico, 「映像研には手を出すな!」OP, 令和2年アーティストソング賞)と「愛のシュプリーム!」(fhána, 「小林さんちのメイドラゴンS」OP, 令和3年作品賞)と、今年に入って遅ればせながら好きになった「Cry Baby」(Official髭男dism, 「東京リベンジャーズ」OP, 令和3年作曲賞)と2年間で3曲だった*1。2年間の平均が年間1.5曲だったところから一気に2.5曲増である。

そこで本稿ではそれらの受賞曲の好きなところ、また惜しくも受賞には届かなかったもののノミネートされた楽曲についても、好きなところを書き連ねていく。

*1:ノミネート作品では今年に入って「薔薇と私」(星野薫(大地葉)・沢田千夏(松田利冴)・沢田千秋(松田颯水), 「かげきしょうじょ!!」ED, 令和3年キャラクターソング賞)も好きになった。

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「リコリス・リコイル」サントラ使用箇所まとめ その1

はじめに

今週「リコリス・リコイル」BD第4巻が発売する。8,9話がセットになった本作のターニングポイント*1巻である。私も初めて新品のテレビアニメのブルーレイディスクを単巻で連続購入していて、毎月給料日の1週間後に引き落とし通知が来るたびにワクワクしている。

さて、本巻の完全生産限定版特典の一つはオリジナル・サウンドトラック②である。1巻に収録された①と合わせれば全54曲のサウンドトラックを聴くことができる。こんなに多いとどれがどの場面の曲だったか、全て紐づけるのは至難の業だろう。ということで全13話の各曲の使用箇所をまとめた。本稿では各曲の説明、私の独断で選んだ主要な使用シーン、レビューをしていく。記事の末尾には使用箇所を一覧表にまとめた。なお、各曲は「ディスク番号-トラック番号」とナンバリングした。使用楽器は聴いてみてこれかな?と思ったものを書いているので、間違ってるかもしれない。

*1:しょっちゅうターニングしてる説もあるけど。笑

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この錦木千束が尊い!! 総集編

はじめに

テレビアニメ「リコリス・リコイル」の主人公・錦木千束(にしきぎ ちさと)の声の魅力に惹かれ、ちさとボイスが素敵なシーンを集めて、全15回に渡って紹介してきた連載記事「この錦木千束が尊い!!」がついに全13話のレビューを終えた。本稿では全話の集計結果を振り返ったり、全話のベストシーンとともに、千束の声が"尊い"ってどういうところ?を改めて考えたりする。

各話の記事へのリンクをご用意しました。

#1 #2 #3 #4 #5 #6 #7 #8

#8.9 #9 #10 #11 #12 #13A #13B

目次

  • はじめに
  • 目次
  • 集計結果
    • 全シーン一覧
    • 評価の内訳
    • 時間帯
  • ランキング
    • 話数別台詞数
      • 1位:13話(34シーン、☆91)
      • 2位:3話(32シーン、☆97)
      • 3位:1話(32シーン、☆83)
      • 4位:7話(31シーン、☆90)
      • 5位:9話(29シーン、☆87)
    • 最大瞬間風速
      • 1位:13話18-24分(15シーン、☆41)
      • 2位:9話18-24分(13シーン、☆43)
      • 3位:7話12-18分(11シーン、☆38)
      • 4位:11話12-18分(11シーン、☆29)
      • 5位:1話6-12分(11シーン、☆28)
  • 各話ベストシーンから見えてくる千束の色々な”尊さ”
  • 千束の印象が変化したターニングポイント
    • 1話6:20「おお~転属組!優秀なのね!歳は?」
    • 3話15:16「私は君と逢えて嬉しい!嬉しい嬉しい!!」
    • 4話5:26「銃持ってきたな貴様」
    • 8話13:36「そいでラストシーンで!あ…」
    • 9話21:28「自分でどうにもならないことで悩んでもしょうがない!受け入れて、全力!だいたいそれで良いことが起こるんだ!それに、たきなの計画は大成功してるよ?今日はめっちゃ楽しかったぜ。やるな」
    • 10話17:05「ありがとう先生。私に決めさせてくれて、ありがとう。それ聞いてたら多分私は負けてた。そんで仕方なくリコリスの仕事をしてたと思う。で、嫌なこととか辛いことは全部先生やヨシさんのせいにするんだ。…それは嫌だわー。うん。ないない。私の仕事も、このお店を始めたのも全部私が決めたこと。それをさせてくれた先生とヨシさんへの感謝は、今の話を聞いても全然変わんない。二人とも、私のお父さんだよ。それが一番嬉しいって感じする」
    • 13話20:23「え?…えー!!お前だお前ー!!」
  • 尊い台詞を発した相手
  • その他のキャラクターの好きな台詞
  • 最後に
  • 「この錦木千束が尊い!!」完結!
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この錦木千束が尊い!! #13B

はじめに

テレビアニメ「リコリス・リコイル」で安済知佳さん演じる主人公・錦木千束の声が好きなシーンを各話で取り上げ続けてきた連載記事「この錦木千束が尊い!!」もついに最終回のレビューに達し、気合を入れて書き始めたところ、Aパートを書き終えた時点で8000字を超えたので、一本の記事で書き切るのを断念。笑

yominabe.hateblo.jp

というわけで本稿ではBパートのレビューをします。ついにレビューが完了する時が来た。

本連載の過去の記事を読みたい方は「漫画・アニメ-リコリコ」カテゴリから。

yominabe.hateblo.jp

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アニメ映画「雨を告げる漂流団地」は少年少女の別れの体験を眩しく描き出す

はじめに

本業が切羽詰まっているなか、6月末に買っていたムビチケを無駄にするまいと、初めて電車に乗り私の住む鹿児島市から姶良市の映画館に行き、アニメ映画「雨を告げる漂流団地」を観に行った。感想を書き溜めたくなったので、本稿でレビューする。

www.youtube.com

わざわざムビチケを買ってまで「雨を告げる漂流団地」を楽しみにしていたのは、監督を務める石田祐康の前監督作「ペンギン・ハイウェイ」をAmazon Primeで鑑賞し、かなり好きだったからだ。ペンギン・ハイウェイは、主人公の理屈っぽい小学生男子が、歯科助手のお姉さんと街で起こる不思議な現象を解き明かそうとする話だ。森見登美彦原作の少し変わった小説のテイストを残しつつ、主人公の身の回りに起こる不思議で素敵な体験と、それを経験する主人公の感情をみずみずしく描いていたのが私の琴線に触れた。観終わってから、石田監督の次回作は是非映画館で観たいと思っていた。そして新作の「雨を告げる漂流団地」。どうやら小学生が主人公らしい。映画館で観ない手はなかった。

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